【ワシントン=塩原永久】米首都ワシントンの連邦地裁は27日夜(日本時間28日午前)、中国系の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を米国内で配信することを禁じた米政府の措置を一時差し止める判断を示した。ティックトック側は禁止措置が「表現の自由」を損ねて憲法違反だと主張していた。地裁は同日深夜の措置発効を直前に中断させた。
トランプ米政権はアプリ利用を通じたデータ流出が「安全保障を脅かす」として、ティックトック側に圧力をかけてきた。中国企業の締め出しを図る米政権にとり、司法判断で中断が余儀なくされ痛手となる。
米メディアによると、ティックトック側の代理人は裁判所に対し、アプリの配信禁止は公共の討論の場に「政府がドアを閉ざすことにほかならない」と説明。「禁止措置が発効すれば重大な結果を招く」と訴え、禁止措置に緊急性はないと主張していた。
米商務省がティックトックの新規ダウンロードや更新を米東部時間27日午後11時59分(日本時間28日午後0時59分)に停止する命令を出し、運営会社の中国IT大手、北京字節跳動科技(バイトダンス)などが差し止めを求めていた。
配信禁止は当初20日深夜に実施する予定だったが、米国事業をめぐってバイトダンスが米オラクルなどとの提携交渉案をまとめ、米政権が交渉進展を評価して1週間、延期していた。
米政府が禁止対象とした別の中国系通信アプリ「微信(ウィーチャット)」についても、西部カリフォルニア州の連邦地裁が一時差し止めの判断を下した。
ティックトックやウィーチャットのサービス制限は8月の大統領令を受けて決定された措置だった。安保懸念から中国企業排除を進めた米政権の対応に、司法判断で相次ぎブレーキがかかる異例の事態となった。
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