1.日時
令和元年10月18日(金曜日)13時00分~15時00分
2.場所
文部科学省 東館3階 3F2特別会議室
3.議題
- 第6期基本計画に向けたナノテクノロジー・材料科学技術分野の推進方策について
- その他
4.議事録
【五十嵐主査代理】 それでは、よろしくお願いいたします。定刻より少し早いですが、ただいまより、第10期のナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第5回)を開催いたします。本日は御多忙のところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
本日の議題は、議題(1)としまして、第6期基本計画策定に向けたナノテクノロジー・材料科学技術分野の推進方策について、御議論いただければと思います。
それでは、早速ですが、事務局より委員の出欠、及び、配付資料の確認をお願いいたします。
【高橋参事官補佐】 ありがとうございます。まず、委員の出欠であります。本日は、三島主査、射場委員、上杉委員、加藤委員、瀬戸山委員、滝田委員、長谷川委員が御欠席です。また、当省の増子審議官ですが、途中より出席の予定であります。
続いて、配付資料の確認に移らせていただきます。配付資料ですが、まず、資料1、イノベーション創出の最重要基盤となるマテリアルテクノロジーの戦略的強化に向けて(案)があります。続いて、お手元の机上に、参考資料1といたしまして、参考資料集、続いて、参考資料2といたしまして、第3回、第4回委員会における委員からの主な御意見。参考資料3といたしまして、ナノテクノロジー・材料科学技術研究開発戦略。参考資料4といたしまして、第六期科学技術基本計画策定に向けた推進方策について(第1次案)、最後、参考資料5として、総合政策特別委員会の中間取りまとめ(案)を添付しております。
落丁、また、欠落ありましたら、事務局までお願いいたします。
【五十嵐主査代理】 資料はよろしいでしょうか。
それでは、議題(1)第6期基本計画策定に向けたナノテクノロジー・材料科学技術分野の推進方策についてに入ります。
まず、事務局より説明をよろしくお願いいたします。
【竹上専門官】 失礼いたします。それでは、お手元に資料1と書かれました提言文書(案)、それから、参考資料1のデータ集の方も使いますので、お手元に御用意ください。またこの後、議論を2つに分けて行っていただく予定にしたので、まず前半の2のところまで先に御説明をさせていただければと思っています。
それでは、タイトル、「イノベーション創出の最重要基盤となるマテリアルテクノロジーの戦略的強化に向けて」(案)と題しまして、内容を簡潔に御説明させていただきたいと思います。
まず、内容に入るまでに全体構成です。1ポツ、「はじめに」ということで、その後の2ポツから続く内容をダイジェストで書かせていただいているところであります。
2ページ目、基本認識といたしまして、4つの切り口から現状を整理しております。1つ目が、マテリアルテクノロジーの重要性がいかに拡大しているかということ。2つ目が、マテリアルテクノロジーの我が国の強みがどこにあるのか。その実績ですね。それから、4ページ目に行きまして、研究開発現場を取り巻く状況がどうなっているかということ。最後に諸外国の政策がどう変わってきているか。それが我が国の動向にどう影響しているかと、こうしたことを4つの切り口でまとめさせていただいております。
先日、委員の先生方に事前にお送りしたものから少しそこの構成が変わっておりますが、省内あるいは先生方の御意見を踏まえまして、直したところでありますので、御了承いただければと思います。
また、6ページ目から基本的な方向性、その後、4つの具体的取組について、それぞれ記載しているところであります。
また今回、名称としてマテリアルテクノロジーの戦略的強化ということを書かせていただきました。前回、前々回と委員の先生方で、材料であるとか素材、こうしたものを今後打ち出していくには、前に出していくべきあるという御意見を踏まえまして、事務局の方でいろいろと考えまして、今回、あと昨年の8月の報告書で、やはりマテリアルという、かなり広めの言葉を一度提案していただいたと、そういう経緯も踏まえまして、今回、真ん中のあたりにありますが、物質や材料、デバイスに係る科学技術のことをマテリアルテクノロジーと定義しまして、打ち出していきたいと、そういうふうに提案させていただいております。
それでは、「はじめに」の方を簡単に読み上げさせていただきます。
現在、総合政策特別委員会において、第6期の科学技術基本計画期間中に展開すべき政策の検討が進んでいると。そこでは、我が国の強みを生かした研究開発戦略を構築することの必要性が指摘されているということで、この報告書の位置付けについて書いております。
参考資料5というもので、この知識集約型の価値創造に向けた科学技術イノベーション政策の展開。これは今、文部科学省科学技術・学術審議会の総合政策特別委員会で、約1年弱の議論を踏まえて取りまとめられた報告書の中間取りまとめ(案)であります。
これは一番最後のページですね。42ページに、「今後更に検討すべき事項」ということで、いわゆる基礎研究の在り方であるとか、産学連携の在り方、システム改革の議論を中心に、40ページ、まとめております。
今後、後半戦、約半年間、日本として、どこの技術分野、どこの研究開発分野、課題達成を狙っていくかということを、総合政策特別委員会で議論いただく。そのときのキーワードはしっかりと強みを生かしていく、そういったことになっておりますので、この審議会といたしましては、ここの審議の参考になる報告書を作るということが第一の目的ということで、最初に書かせていただいているところであります。
それでは、本文の方に戻らせていただきます。2つ目の段落からですけれども、まずは現在の政策の背景であります。いろいろ書かせていただいています。
科学技術イノベーションは、今や世界各国で、国家の最重要政策の柱の一つとして推進されている。そうした中で我が国は、第5期基本計画においてSociety5.0というコンセプトを掲示して、その後、AI、バイオ、量子といった、この3つの先端技術分野の強化を最優先として取組を進めていると。
あるいは、SDGs、パリ協定の長期目標の達成といったことに向けて、持続可能でインクルーシブな社会を実現していくと。こうしたことは今の科学技術政策の議論の中では中心に来ております。こうした状況を説明させていただいているところです。
こうした中で、AI、バイオ、量子といった先端技術分野の革新、あるいはSociety5.0、SDGs、こうしたものに「マテリアルテクノロジー」の活用・革新、こうしたものが共通して大きく求められている状況という重要性を書かせていただいているところであります。
次からも大事ですけれども、ここで重要となるのは、マテリアルテクノロジーの研究開発に関して、我が国が大きな強みを持つという点であるということ。ナノテク・材料がこれまで様々な社会変革を牽引したという実績。我が国が生み出す材料やデバイスが、輸出産業の最重要基盤として外貨を獲得する源泉となり、我が国のプレゼンスの生命線となっているという、産業面での強み。あるいは、大学へ国研、企業等の研究開発現場には、優れた人材、知識、情報、データが広く膨大に蓄積されているという研究開発現場での実績、こうしたものを書かせていただいております。
2ページ目に行きまして、他方で、こうした我が国の強みが近年大きな危機にさらされている。特に若手研究者が大きく不足しており、大学等で生み出された知を卓越知へ育てる取組、あるいは卓越知がその価値に見合う形で社会実装につながる体制整備も十分でないと、これも委員の先生方から、前回の委員会で御指摘いただいたことをしっかり書かせていただいております。
最後に、海外の動向ですが、こうした中で、米国や中国をはじめとする世界の主要国・地域は、今後の最重要な基盤技術の一つとしてマテリアルテクノロジーに注目し、投資を強化し始めている。こうしたことを記載させていただいております。
そこでやるべきことといたしまして、科学技術面と産業面の双方で過去の投資に基づく強みを保持している今だからこそ、我が国は、重要性が拡大するマテリアルテクノロジーの研究開発を、第6期基本計画期間中における次の新しい一手として戦略的に強化し、我が国のイノベーション創出を牽引していかなければならないと宣言しているところであります。
また、それ以降、重要な点として、この委員会では、まさに1年前ではありますけれども、こうした認識の下で、研究開発戦略を取りまとめていただいたと認識しております。ですので、その重要性は変わらないということと、今回の提言も基本的にはこの戦略ですね。こちらを背景としながら、1年間で足りない部分を議論していただいたという認識ですので、そうしたことを記載させていただいているところであります。
続きまして、2ポツ、基本認識であります。「はじめに」と若干重なる部分も出てきますけれども、改めて説明させていただきます。
まず、1つ目、マテリアルテクノロジーの重要性の拡大であります。
1つ目に先端技術分野との関係であります。今、注目されているAI、バイオ、量子といった先端技術分野でのイノベーションが重視されている中、各技術の成果創出に当たって、マテリアルテクノロジーに係る多くの技術課題の革新がその鍵を握る。AIを支える半導体については、革新的なデバイスの登場が求められておりますし、バイオテクノロジーに関しましても、再生医療における材料の革新、あるいは生物特有の高度な機能を実現するデバイスの革新が求められております。
量子技術分野では、量子コンピュータを実現する材料あるいは量子センサ材料、こうしたものが不可欠であり、もちろん量子マテリアルの研究開発も今、量子戦略の方ではかなり重視して、重点課題として指定されているところであります。
こうしたあらゆるところで、今、政府戦略が定められている3つの領域において、材料が非常に鍵を握るということをまずは書かせていただいているところです。また、こちらは、第5期基本計画の段階でも既に言及されていたことですけれども、Society5.0の実現に当たって、サイバー空間とフィジカル空間とをつなぐ基盤技術を整備することが不可欠となる。
次のページに行かせていただきますけれども、フィジカル空間に大量かつ多様に存在するデータに対応でき、異なるセンサ、デバイスといったマテリアルテクノロジーの革新と活用が求められるということ。
また、国際社会への貢献という観点も非常に重要となります。前回の委員会でも御審議いただきましたけども、SDGsの目標に注目すると、例えば、大気や水をきれいにするシステム、太陽光電池や環境発電の効率的利用等、マテリアルテクノロジーの革新なしには達成できない目標が数多く含まれていると。また、パリ協定の長期目標の実現についても同じであります。そうした状況も例示としていろいろと書かせていただいております。
ここから大事ですけれども、このように、我が国が重視するほぼ全ての政策及び技術領域において、マテリアルテクノロジーのイノベーションが共通して求められている。こうした挑戦的かつ魅力的な技術課題に、マテリアルテクノロジーに係る研究者が切磋琢磨しながら取り組むことが必要であるという重要性を書かせていただいております。
次に、(2)マテリアルテクノロジーの我が国の強みとしての実績です。ここは一番ボリュームがあるところですが、我が国がマテリアルテクノロジーの研究開発を積極的に推進していくことで、イノベーションが次々と創出されていくことが期待できると。まさにこれを裏付けるのが、マテリアルテクノロジーが持つ科学技術面と産業面での大きな強みであるということを書かせていただいております。
まず1つ目、産業面であります。我が国を牽引する製造業の付加価値の源泉は、競争力のある材料・デバイス技術であり、実際、現在、我が国の輸出総額のうち、工業素材が約2割を占めており、世界市場で5割以上のシェアを有する製品も数多く存在しております。こうした材料・デバイス産業の強みが世界における我が国のプレゼンスと国際交渉力発揮の生命線となっているということで、幾つか少しデータを紹介させていただきたいと思います。お手元の参考資料1ですが、例えば、4ページ右下、我が国の輸出における産業分野の割合。最近、近年やや若干落ちていますけれども、やはり工業素材が輸送機器と並んで2割強の割合を占めていて、そこはもう昔から材料の重要性は、産業の面からも不変であるということ。あるいは5ページ目を見ますと、風船が中くらいのものから小さいところですけれども、素材産業がいかに高いシェアを誇っているところを占めているか分かると思います。
また、6ページ目ですね。主な産業の世界シェア推移ということで、素材は一番左側の白いところですけれども、いろいろと様々な産業がシェアを落としている中で、しっかりと保ってきているということも読み取れるのではないかと思います。ということで、幾つかデータを御紹介させていただきました。
次に、本文に戻りまして、科学技術面の強みをまたいろいろと書かせていただいております。まずは実績です。我が国発の材料・デバイスの発展が、これまでの社会の変革の原動力となってきたという数多くの実績があると。ここには主なものを書かせていただきました。
例えば光ファイバーであるとか、微細加工技術の高度化、巨大トンネル磁気抵抗効果、リチウムイオン電池です。こうしたものがAI・IoT・ビッグデータ、まさに今の議論の中心となって、今の世界の中心となっている、この時代自体を切り開いたということを書かせていただいています。
また、こうした情報化社会の進展のみならず、ネオジム磁石であったり、青色発光ダイオード、こうしたものが環境分野をはじめとする広範な分野の発展の原動力にもなってきたという実績を書かせていただいております。
青色発光ダイオード、あるいはリチウムイオン電池、今月、リチウムイオン電池でノーベル賞受賞がありましたけれども、こうしたことが我が国のマテリアルテクノロジーの強みと貢献が世界に認められている証であると。また、こうした実績のみならず、ナノカーボンやスピントロニクスといった魅力的な機能を持つマテリアルの研究開発でも我が国が今、世界ナンバーワンを牽引していると。
さらに、魅力的な機能を持つマテリアルが、当初想定していた応用領域とは異なる方向で社会実装される事例も数多く生まれてきているというような実績を、具体例を書かせていただいております。
また、ちょっと切り口が変わりますけれども、科学技術面の強みの背景として、この研究手法自体が細かい点によく気付くことができる。粘り強く諦めずに実験できるといった日本人の気質、日本らしさにうまく合致していることが挙げられると、こうしたこともしっかりと政策を検討していく上では、指摘しておく面ではないかということで書かせていただいております。
研究開発環境であります。SPring-8等の最先端の共用研究施設が国内に複数存在し、ナノテクノロジープラットフォーム等を通じて、設備・機器の効果的な共用体制が全国的に整備されていることも強みであると。また、少し2行、3行飛びまして、NIMSが現在、我が国に3機関しかない特定国立研究開発法人に指定され、トップクラスの研究業績を継続して上げている。こうしたことも強みの例として挙げさせていただいております。
また、ここも少し切り口が変わるんですが、我が国全体の研究者や研究費獲得実績を俯瞰した際に、マテリアルテクノロジー分野が一つのボリュームゾーンとなっている。特にハイレベルな研究開発活動においてその傾向は顕著であり、国内ではこの分野に優れた研究者が数多く存在していることが確認できるとしています。
また、資料に移っていただきまして、幾つかデータを御紹介させていただければと思いますが、まず9ページですね。分野別に見た論文数の割合。これは論文数なので、研究者の割合とはまた変わってくるとは思いますが、論文数で見ると、我が国の6.2%が材料科学ですね。更に化学と物理をどこまで含めるか。宇宙も入っているので、そこは推測になりますけれども、32%。大体、約2割ぐらいですかね。いわゆる材料、マテリアルテクノロジー、まさにこの領域から出てきている論文であるということ。
あるいは11ページでありますけれども、今回、ひとつ分析させていただきまして、科研費において、ナノテク・材料に関連するような研究がどれぐらいの割合で採択されているかと見たときに、やはり費目の大きさですね。右側のグラフ。基盤A、B、Cぐらいだと、Bだと16%。これはAだと20%。Sだと31%ぐらいがナノテク・材料。
そして、1ページ戻っていただきまして、特別推進研究になってくると、これも名称から取ってはいますけれども、5割ということで、かなり大型の研究費。いかに大きな、日本が本当にハイレベルの研究をやっているところは、この材料研究をやって、論文を上げているか。これはまだまだ分析しないといけないことは多いとは思っていますが、こうしたデータも出てきております。本文の方に戻りますけれども、これ自体は、マテリアルテクノロジーを対象にした取組を強力に進めることが重要であると同時に、我が国におけるマテリアルテクノロジーの推進の在り方自体が今後の我が国の科学技術イノベーション活動全体、要は、第6期基本計画の育成をも決定付ける可能性を持つことを示唆しているという視点も書かせていただいております。
最後に、ナノテクの重要性でありますけれども、ナノテクが果たしてきた役割は大きい。21世紀以降のナノテクへの継続した投資は、ナノテクを我が国の強みとなる世界トップレベルの基盤技術として育て上げるとともに、理学と工学、医学と工学といった異分野融合を牽引した。その結果、ナノスケールで現象を解明し、ナノスケールに起因する機能開拓を目指すという草創期の使命を果たし、ナノテク自身が体系化されたツールとなることで新たなイノベーションを創出する基盤へと進化した。今後は、スケールの対象を、ナノから量子、ナノからマクロへと発展させることにより、これまでの蓄積を生かした新たなイノベーション創出が大きく期待できるということを書かせていただいておりまして、ここは後半のナノプラの在り方のところにしっかりとつなげさせていただいているところであります。
3番目、研究開発現場を取り巻く状況であります。5ページ目に移っていただきまして、まず1つ目、マテリアルテクノロジーを構成する基礎学問分野である化学、材料科学、物理学分野の論文指標が10年間で質・量ともに低下しており、国際的シェアも地位を下げていることは大きな懸念であるということ。他方で、国際会議においてはまだまだ存在感は示しているということが挙げられます。こちらはまたデータ集の方に移っていただきまして、15ページであります。
一度、これは参考資料としても前の会議で出させていただきましたけれども、化学、材料科学、物理学分野の論文数、トップ10%論文数です。シェアのみならず、量につきましても、今、いずれの分野でもこの10年間で低下傾向にあるということであります。
また、16ページ目、次のページでありますけれども、この低下傾向が伸び率ということですけれども、化学、材料、物理あたりのところは、特に物理のところですかね。今一番、伸び率といいますか、落ちている割合が一番高くなってしまっていると。これは1%論文も含めてです。
ただ、次、ゴードン会議の動向分析とありますけれども、トップクラスの研究者レベルで見ると、この材料関係会議に呼ばれる研究者としては、米国、ドイツ、イギリス、中国に続いて、4番目の地位にあります。こうしたことは、まだ強みは残ってはいるものの、若手を中心にその存在感が弱くなってきているのではないかという仮説が立てられるところであります。
本文に戻っていただきまして、若手人材に関しては、大学等において研究開発活動の中核を担う博士課程学生やポストドクターの確保が困難になってきており、特に、アカデミアを志向する日本人の学生が近年大幅に減少傾向にある。こういう次世代を担う人材の不足状況に正面から向き合う必要があるということを書かせていただいております。
また、民間企業との関係であります。民間企業の研究開発が短期化傾向にある中で、企業内で人材や技術を育む土壌が失われつつあると。そのため、オープンイノベーションを加速する取組、あるいは大学発ベンチャーの設立といった取組がこれまで以上に重要となっている。これは第5期のところでも言われていたことですが、ここは引き続き重要な点であるところであります。
しかし、やはり大学における研究者の産学連携活動に対する支援体制は、政府も取組を進めてきておりますが、今はまだまだ不十分であると。そうしたことから、ここも先日、委員からのプレゼンの中でありましたけれども、大学でせっかく生み出された多様で卓越な知を、その潜在的価値に見合う形でスピード感を持って社会実装につなげることが必ずしもできていない。言い方を変えれば、埋没しているのではないかとの指摘があります。
また、これも委員から御指摘がいろいろとあったところです。政府の取組である課題解決型の研究開発支援の取組において、大学等の研究開発現場に対して、単線的な目標設定に基づく成果創出、あるいは応用展開を急ぎ過ぎると、こういった傾向があり、融合等を通じ、イノベーションを生み出す種となる卓越知を育てることも重要ですが、そこが十分育めていないとの指摘も様々な方々から寄せられているところであります。
最後に、研究手法の関係です。デジタル革命によるAIやビッグデータの発展が材料開発手法を大きく変革しており、材料データを用いて材料開発期間の短縮、低コスト化を目指すデータ駆動型材料開発の取組が世界各国で進められている。そうした中で、世界的に卓越した良質かつ豊富な材料のデータベースをNIMSが持っていたことは、我が国の大きな強みとなっているという状況を記載しているところであります。
最後、諸外国の政策動向の影響であります。こちらは前回、中山委員からプレゼンを頂きましたけれども、米国や欧州、中国、韓国といった世界の主要国・地域がマテリアルテクノロジーへの重点投資を実施している。特に中国は、「中国製造2025」を契機に、半導体や部材を2025年までに自給7割とすることを目標に掲げた大規模投資を行っていると。また、昨今の動きとして、政府全体の科学技術予算の中国の大幅な伸びと相まって、世界各国の高度人材、卓越知を積極的に取り込もうとする動きが活発化している状況にあります。
また、米国に関しましても、次のページになりますけれども、半導体・電子材料に対する取組を政府として近年強化しており、希少鉱物対策に向けた新たな検討も進んでいる状況であります。韓国につきましても、今後の政府投資の大幅拡充を発表しているところです。こうした米中の技術覇権争いを契機とした技術安全保障の動き、これが近年、世界全体へと波及しており、希少資源、材料、これを国内で戦略的に確保することの重要性が高まっている状況、こちらもしっかりと認識しなければいけないと。以上、4つの切り口から、現状認識で整理させていただいているところです。
まずここまで御審議いただければと思います。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございました。
今、事務局から御説明がありましたが、この提言(案)に向けまして、本委員会では、第3回、第4回、御議論いただきました。また、その後の先生方の御意見も反映して、事務局でこういう提言(案)として取りまとめております。この6ページの前半までのまず現状認識、基本的な認識のところ、これが提言(案)のスタートとなりますので、特に今回、ナノテク・材料の中からマテリアルテクノロジー、こういう言葉が出てまいりました。これは物質・材料、デバイス、これまで単一だったものが個々に変わっていくと、そういう進化を感じさせるようなワーディングだと思いますが、これまでの先生方の御意見がしっかり反映されているかという観点も踏まえまして、御意見、感想を頂きまして、もし修正意見等ありましたら、具体的な修正案も併せて頂戴できればと思います。よろしくお願いします。
【馬場委員】 マテリアルテクノロジーということで、非常に強力な提言をまとめていただきまして、ありがとうございます。前回、マテリアル革命ということで、ナノテク・材料の研究開発戦略ということでまとめていただいているわけですが、そのナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略の一環としてマテリアルテクノロジーがあると思うんですけれども、この文章の「はじめに」のところに、その関係が少し分かるような形で、例えば「はじめに」の4つ目のパラグラフに、マテリアルテクノロジーの定義を先ほどしていただきましたけれども、そこにナノテクノロジー・材料科学技術分野の研究開発戦略の一環というか、これから一番推すところがここですよというような、内容を書いていただいた方かいいんじゃないかというふうに私は考えます。
理由が2つほどありまして、1つは、やっぱりナノテクノロジーというのが融合のシンボルになっていて、我々、ナノテクノロジー・材料、先生方もそうですけれども、これまで20年ぐらい皆さんやってこられていたんですけれども、例えば私がやっている医学との連携ということを考えますと、医学の分野では、医学会総会という、医学全員の先生が集まる学会が4年に1回、開催されていまして、今年開催されたんですが、4年に1回の会議で、毎回、岩波新書から本が出されるんですね。その中に新しい技術を医学にどう取り込むかということがあるんですが、ナノテクノロジー、今年、やっとその医学会の中の岩波新書に入ったんです。
そういう意味では、医学の分野でもナノテクノロジーの重要性は認識されつつあると思うんですが、しかし、そこに入るまで20年掛かっている。それを考えると、やっぱりナノテクノロジー・材料分野の一環として、我々、これを強く推しているんだということが分かった方が、特に、我々から見ると、それは当然のことだと思うんですけれども、ほかの分野の人から見たときに分かりやすいんじゃないかということと、もう一つは、ナノテクノロジーをやっている研究者の中には、必ずしもマテリアルだと認識を余りせずにやられている分野の方もいらっしゃると思うので、せっかくそういう研究がこれまで積み重ねられてきましたので、そういったものを全部融合して、このマテリアルテクノロジーの中に皆さん参画して入ってきてもらって、もっと我が国の強みを強くするといったような観点があった方が、提言としてはより多くの人の心に響くのかなと思いますので、一つは、今申し上げた、最初のマテリアルテクノロジーの定義のところに、そのナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発戦略の次世代のコンセプトとか、何か非常に分かりやすい言葉でまとめていただくのと、また具体的にどう書くのがいいのか分かりませんけれども、これまでのナノテクノロジーの成果がうまく、このマテリアルテクノロジーの中に全部盛り込まれていくんだと。あるいは集結していって、このマテリアルテクノロジーというのが我が国の産業をうまくいけば引っ張っていくんだというような内容を入れていただくと、より、特に融合分野の観点から見ると、融合分野の方に非常に分かりやすい内容になるんじゃないかなと感じました。
以上です。
【五十嵐主査代理】 大変貴重な御意見ありがとうございます。私も全く同感といいますか、ナノテクがあったからこそ、このマテリアルテクノロジーという新しい形がこれからもっともっと進化して、デバイスもより高機能化できる、そんなことにつながるんじゃないかなと感じています。
今の関連で、もしそのほか御意見ありましたら頂けませんか。栗原先生、どうぞ。
【栗原委員】 今回、ナノテクノロジーという言葉をこの中にきちんと入れていただいたことは、大変有り難いと思っておりますが、今、馬場先生の言われたような形で、前の方へ出されると、より意図がはっきりすると思います。
今、馬場先生の言われたところで、今までの成果というところは、4ページ目の4つ目の丸のところにある程度書いていただいていますが、割と一番最後に書いてあるので、もう少し前に出すとか、あるいは成果としてのフレームで書くと、少し順番が変えられるのかなと思って、伺いました。去年、中山さんが主査でまとめられた報告に書かれているような言葉でまとめるのも、この内容の広さを引用するという意味ではいいのかなと思って拝見していました。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。
そのほかありませんでしょうか。では、高梨先生。
【高梨委員】 いいですか。ちょっと別な観点で。細かいことになっちゃうかもしれないんですけど、私、印象として、材料の中で、いわゆる構造材料というのがあんまりこれはないなという感じがしたんですよね。その後にちょっと出てくるんですけど、超性能材料とかという、わけの分からない名前がついているんですが、構造材料は、橋本先生がよく重要性をおっしゃっていて、私もあれは賛同していたんですけど、それもやっぱり、今まで強かった日本が、ちょっと今、危機的な状況もあるのかもしれないと、機能材料にばかり材料というのが行っちゃっている感じがしていて、実績なんかも、これは参考資料を見ると出ているんですけど、やっぱり機能材料ばかりで、もうちょっと、私は専門じゃないので、むしろ、三島先生はきょうおられないけど、五十嵐さんとか宝野さんの方がよく御存じかもしれないですけど、そういったところで、もうちょっと出せるものはあるんじゃないかなと。そこら辺をもうちょっと入れてもらった方がいいんじゃないかなというのが私の感想です。
【五十嵐主査代理】 どうもありがとうございます。
宝野先生、何かコメントありませんでしょうか。
【宝野委員】 おっしゃるとおりだと思いますが、例えばここに書かれている例のように、一言で分かり易く言えるような新しい構造材料がこのところに出ていないから、ここに入れにくいというのかなという気がいたします。
でも、構造材料の重要性は変わりませんから、例えばMIを活用して、構造材料を効率的に開発していく、特に自動車産業を支えるような材料。これは日本にとっては非常に重要な産業ですから、それに必要な構造材料の研究を継続していく重要性は変わらない。そこをちょっと入れておいていただければ、すごくいいと思いますね。
【栗原委員】 宝野先生、NIMSの耐熱合金のあのエンジンのタービン等に使われているような、例は外国の飛行機のエンジンの材料だから、ここに書いてもいいのではないですか。
【宝野委員】 そうですね。日本発の材料が使われていますし、ユーザーは国内企業に限らないけど、航空機であれば、特に外国企業に使っていただかないと日本に入ってきませんから、そういった点で、それを発信しているというのが非常にシンボリックではあると思います。
【栗原委員】 構造材料としてはシンボリックかなと思います。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。今、お二人の先生方からコメント頂きましたように、構造材料に関しても、ナノテクによって、いろんな高機能化、進化したというのは事実ですので、何らかの形で表現できたらというふうに感じます。
【栗原委員】 ナノテクで高度化するかどうかと、耐熱材料というのは分からないかもしれないですね。
【竹上専門官】 先ほど幾つか御意見頂いた点に関してですが、まず最初のナノテクノロジーの重要性、まさにおっしゃるとおりかと思いますので、2ページ目の「本委員会はこうした認識の下」のところにしっかり、まさに先ほど馬場先生がおっしゃったようなニュアンスを、4ページにあるエッセンスも含めながらしっかり追記させていただきたいと思います。
まさにこのマテリアルテクノロジーと掲げているのも、領空侵犯という言い方は変かもしれませんが、いろいろなところにしみ出して、いろいろな方々に共感してもらえるような方向性で打ち出したいというのはまさにおっしゃるとおりですので、より様々な方々が加われるような形での工夫を施したいと考えております。
また、構造材料のところが足りないというのは、おっしゃるとおりかと思います。まず磁性については何か追記できるようにしたいと思います。あと、後半のところで、超性能材料という言葉がいいのかというのは、事務局と何名かの委員の方々で話して、入れたものであります。ナノ材委員会の過去を振り返ると、例えば核融合との次世代エネルギーだとか、宇宙、海洋、この辺まで含めた議論をやってきていなかったところがあります。もともとの議論の入り口は、やはりそういうところにも材料というのがすごく大事になってきていて、そこもきちんと一緒に考えていく必要があるということで、まさに構造材料と併せたような概念をしっかりと考えていけると良いと思い、こういう言葉を出しました。もちろんそれで構造材料が埋没してしまっているということであれば、名称なり、ここにある記述をちょっと工夫していただくような形が良いと考えています。名称のところは研究開発戦略をベースに多少造語しており、事例とはいえ外に出ていく形になりますので、是非御議論をきょう頂戴できればと思っているところであります。
事務局からは以上です。
【中山委員】 今の竹上さんが領空侵犯とおっしゃいましたけど、それこそナノテクとか材料とかマテリアルの本質の言葉ではないかと思います。各分野と言うかな。最先端のところに対して寄与しているということなので、領空侵犯とは書きにくいので、融合とか横断とかそういう言葉をなるべく多く書いていただきたいです。あと、マテリアルとナノテクの話ですけど、マテリアルだけだと、この材料分野の人みたいな感じになってしまう。それに対して、本当はナノテクというのは各分野の最先端にお金を投じる仕掛けであったはずで、ナノテクが横串や横断そのものだったのですが、それが多少狭義に取られてしまって、ちょっとナノテクが狭いイメージになってしまったので、マテリアルという言葉に置き換えていると思うので、うまくナノテクという言葉を、今まで議論いただいたように書いていただければいいのかと思います。
なので、先ほど馬場先生が言われたように、例えば医学会の本に、ナノテクという言葉が入っているというのは、そういう横断的なことがやっと認められてきたということだと思いますので、その辺、御考慮いただければと思います。
あと、幾つかありまして、最初のページの下の方、「日本発の材料がイノベーションを通じた社会変革を牽引してきた」です。発明とか発見とかを出し続けることは最重要であろうと思います。今度のリチウムイオンバッテリーのノーベル賞も日本発の技術でありました。ノーベル賞だけが指標ではありませんが、ノーベル賞も半分はこのエリアです。ナノ・材の分野ですよね。そういうものが今後も出続けるようにしないと、本当に我が国はいろんなことが枯れてしまうと思います。後ろの方に、「単線的ではなく」という言葉がありますが、まさしく単線ではなくて、深い投資をしっかりして、次の世代に備えるということをしっかり書いていただければと思います。
あとは細かいことで、2ページ目の2ポツのちょっと上、「本提言は、マテリアルテクノロジーの重要性や強みなどを」のあたりです。国際動向等も当然大きく関与していると思うので、この辺に「国際動向」と一言でも入れていただければいいのかなと思いました。
あとは3ページ目の(2)ですね。よく書いていただいていると思います。まさにそのとおりですが、このAIとかビッグデータ、IoT、あるいは今後発展する可能性がある量子など、全てがいわゆる社会の頭脳部分ですけど、それら頭脳を支えるのは、ほとんどがこの材料、マテリアルテクノロジー、ナノテクのところです。つまり、そこが欠けると頭脳が完結しないわけですよね。サプライチェーンあるいはバリューチェーンと書かれていますけど、そういう頭脳を支えているものは材料やナノテクノロジーで、サプライチェーンやバリューチェーンの中核です。ちょっと忘れられがちですが。
IT系の人に聞くと、材料なんて今さら投資は要らないのではないかとかさえも言われてしまうのですが、そんなことはない。それはもう諸外国がいち早く気づいて、材料のところへの投資合戦になっているのは、まさしく頭脳を支えるところに材料があり、そこへの投資を怠ると、頭脳そのものが進展しなくなってしまうよということだと思います。ここは大事だと思いますので、よく見ていただければと思います。
とりあえず以上です。ありがとうございます。
【五十嵐主査代理】 どうもありがとうございます。
どうぞ、栗原先生。
【栗原委員】 もう一点いいですか。4ページに、我が国におけるマテリアルテクノロジーの推進の在り方自体が、今後の科学技術イノベーション活動の趨勢を決定付けるということを書いていただいて、これはそのとおりだと思うのですけれども、今、非常にいろんな分野でマテリアルズの存在感があるということを書いてありますが、論文数に関しては、減り分だけを一番大きいと書いているんですけど、私が見ている論文の世界ランクで見ると、化学は、オールではまだ5位で、全ての分野でも一番高いんですね。材料は6位で、物理学は6位で、他と比較すると、臨床医学は5位で、基礎生命科学は5位なので、決して分野間の比較で言うと、低くはないんですけれども、むしろ活力を維持するために、研究力を維持するためには、この分野の論文数が減っているという、その事実は非常に今後に対して懸念材料なので、しっかりと推進していくことが大事だということを示しているのではないかと思います。
産業もやはり大きいですし、だから、学術も活動としては非常に大きいのだと。その大きなスケールのものをレベル高く維持することがどこかに感じられるように、学術においてもその点を少し書いていただけると、と思いました。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。どこかの表現に入れられるようであれば。
【竹上専門官】 そうですね。一番強いところだったところが、まだ日本の中では強いんだけれども、落ちてきている、その危機感を表現していくストーリーにしたいと思ってはいまして、まさに今、先生がおっしゃったようなところは、例えば5ページ目の危機感のところですね。論文数が低下している、国際的シェアも地位を下げていることが懸念材料といったところに、だからこそしっかりとスケール高くやる必要があるといったような形で追記させていただきたいなと思います。
【栗原委員】 お願いします。もともとトップ3ぐらいに入っていたものがそうなっているのが非常に残念なので。
【五十嵐主査代理】 武田先生、どうぞ。
【武田委員】 これまでの議論のように、技術の方でイノベーションを興してすばらしいものを作っていくということと、トップであり続けるということは大事だと思いますが、もう一つ、出口側から見たときに、重要なのは持続可能な社会や、環境に対する配慮など、出口の方も考えて、循環できる材料という観点で、もう少しだけボリュームを上げればいいのではないかと思います。
具体的には、3ページ冒頭に書かれてあるところですね。「環境やエネルギー、人体に優しく」とか、あるいは国際社会への貢献、SDGsなどの目標に向けて、やはり持続可能な社会を目指してということです。例えば、原子力ですばらしいものを開発しました。しかし、核燃料をどう廃棄していくかまでは十分に考えられてなかったというような、過去の反省も踏まえなければなりません。すばらしい材料を沢山作っていく場合に、それらが循環できるようなことを考えなければなりません。プラスチック材料をどううまく処理して、循環させていくか、やはり廃棄のことまで考えて、どういう作るかが重要になります。生物合成などもうまく利用し、加えて生物分解も同様にうまく利用して、国際社会や地球規模での課題にきちんと目を向けていくことが重要です。そこも考えた上での技術のイノベーションを我々は推進していくという、そういうふうな提言というのが、もう少し強調されたら、よりいいのではないかと思いました。
【五十嵐主査代理】 どうもありがとうございます。3ページの1つ目の丸のところに、SDGs、パリ協定という言葉が出てくるんですが、今、先生におっしゃっていただいたように、もう少し強調するようなキーワードですかね。それが必要かなという御指摘かと思います。ありがとうございます。
菅野先生、どうぞ。
【菅野委員】 2点ほど指摘させていただきたいと思います。
まず最初に、「長時間の労働」というのが、「粘り強く」と変更されたのは大変よろしいかと思います。例えば3ページ目、4ページ目ですか。4ページの「ナノテクが果たしてきた役割は大きい」と。ナノテクというのは、ナノテクノロジーと呼ぶと最初に書いていますけれども、ここで「ナノテクノロジー・材料」と最初なっていますので、ナノテクノロジーと材料との使い分けというか、ナノテクノロジーをどうするかという、ここの議論だったのですけれども、タイトルとしては、「ナノテクノロジー・材料」なので、そこをナノテクノロジーだけを我々は議論しているような感じなので、ここの整合性というのがどうかなというのを感じました。
もう一点は、例えば材料の研究から、あと、デバイス、製品になるまでの時間軸ですね。言いたいことは、根気強くサポートしないとだめですよということなんですけれども、例えばノーベル賞のリチウム電池は、結局、50年前の材料の革新が40年前のプロセス開発になって、それで産業が盛んになって、日本の産業が盛んになって、ちょっと落ちていって、それでノーベル賞という時間軸なんですけれども、結局、材料に対する投資というのがかなり遅れて花開くという、そのコンスタントなサポートが必要ですよというのが、後の方にはあるんですけれども、最初にもその指摘が少しあればいいかなと思います。
以上です。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。「研究開発現場を取り巻く状況」のところに、そうですね。研究時間を十分に確保できておらず、研究力の低下のみならずというような、そういう表現は入っているんですが、少し強調したいですね。
【竹上専門官】 この実績のところで、これまでの例のところのその背景として、まさに今、先生おっしゃったような長年にわたり投資されていることを示すデータもありますので、そうしたところを追記させていただく形にしたいと思います。
【五十嵐主査代理】 はい。ありがとうございます。
そのほかありますか。どうぞ。
【納富委員】 今回、マテリアルテクノロジーという言葉で、多分これはもともと素材を中心にということだと思うんですけど、これはなるべくこの範囲を広げて、ここに挙げている定義ですと、物質や材料、デバイスに係る科学技術であるということで、デバイスという言葉は結構、後の方でもいろいろ出てきていて、革新的な次世代デバイスの登場が望まれているとか、デバイスにつなげたいというところがうかがわれるんですが、そうだとすると、もともとナノテクノロジーというのは多分材料とナノ加工技術が組み合わさって強みを出すというところなので、もう少し微細加工技術の重要性を入れてもいいかなと私はちょっと感じました。用語として、微細加工技術は多分1か所ぐらいしか出てきてなかったので、もともと日本は微細加工技術、非常に強くて、ただ、現在、正直言って、海外と比べて、だんだんその優位性が失われてきているというのが現実だと思うんですけれども、ただ、今現在でもかなり日本の潜在的な強さはあると思うので、それを絶やさないためにも、そういう微細加工技術とナノ材料技術を組み合わせるというのが大事なんだよというところをもう少し入れていただければなと思いました。
基本的に、微細加工技術というのは日本人には向いているところだと思いますし、あと、産業としましても、そういった微細加工技術のハードウエアを作る産業というのは、日本は今でも非常に強いので、そういうものを含めても、もう少しそこを入れていただければいいかなと思いました。
【五十嵐主査代理】 それは強みのところに入れるんですかね。
【竹上専門官】 どこにどう入れるかということと、重点技術領域の議論のところでも、超性能材料や接着接合の部分にそうした観点を追加できないか考えています。後半の御議論で、是非この2つについてはもう少し変えていく余地があると、今お話をお聞きしながら考えているところです。
【五十嵐主査代理】 そうですね。後半でもう少し議論をさせてください。
そのほか、この基本認識のところまでで追加の御意見、コメントありませんでしょうか。よろしいですか。
じゃあ、前田先生、どうぞ。
【前田委員】 済みません。もしかしたら後半のこれからの推進の仕方になるのかなという気もしないでもないんですが、実はきのう、京都での堀場雅夫賞に出席していまして、ノーベル化学賞を受賞された吉野さんが審査委員長だったので、ずっといらっしゃったんですけど、実はこの堀場雅夫賞というのは毎年テーマが決まっていまして、今年は電池だったんですね。テーマが、電力及び電池を最大限に活用する効率的な制御のための先端分析、計測技術ということで、35件ぐらい、海外からも応募があったんです。
今回、吉野さんが受賞されたのは、一つの材料というよりも、材料を使って、全部システムに組み上げて、電池全体として出来上がったという、システムとしてできたということに評価をされたということだと思います。
また、今回、この堀場雅夫賞として題材に挙げられたのは、システムでどう上手に電力を平準化させるかとか、いろいろまち全体で上手に保とうかというようなところの制御の仕方だったりが非常に重んじられていたんですね。材料そのものが強いのは確かに日本は強いんですけれど、ある意味、パーツ、パーツではなくて、それを上手にシステムで持っていかないと勝てないと思いますので、やはりセパレータは日本は一番すごいですよ、正極材料、強いですよ、負極材料、強いですよと言っても、じゃあ、システムで全部組み上げたときに、中国とかに取られてしまってはおもしろくないなと思いますので、その制御だったり、システムで考えるというようなところをどこか入れられないのかなと思ったんですね。でも、それって、もしかして後半の部分なのかなと思いながら聞いていました。
吉野先生、最初から最後まで全部いらっしゃって、審査委員長だったんですけれど、とてもシステムというところをこれから重んじたいということをすごくおっしゃっていました。
以上です。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。システムを更に高機能化する、あるいは独自技術にするためにマテリアルが極めて重要だと、そういうことにつながると思うんですが、そのあたりの議論もできれば後半でさせてください。
【前田委員】 そうですね。
【五十嵐主査代理】 そのほかありませんか。
よろしければ、後半の方に移りたいと思います。それでは、事務局の方で、3ポツ、「基本的な推進の方向性」以下ですね。御説明いただけますでしょうか。
【竹上専門官】 それでは、6ページ目をお開きください。3番目、基本的な推進の方向性であります。ここまでの基本認識の整理を踏まえまして、2ポツ目です。「第6期基本計画においては、マテリアルテクノロジーをイノベーション創出に向けた最重要基盤技術の一つとして位置付け、関連する科学技術イノベーション活動を政府が戦略的かつ一体的に推進していくことが不可欠である」としています。
「我が国の優れた研究者のボリュームゾーンを占めるマテリアルテクノロジーの知のポテンシャルを、異分野融合、産学官融合の2つの融合促進を通じて、イノベーション創出に効果的につなげていくことが求められる」というアプローチ。あるいは、「また同時に、次世代人材の不足をはじめ、マテリアルテクノロジーの強みが危機にさらされている中で、優れた人材を引き付け、その能力が最大限発揮できる環境を整備することで、我が国の強みのコアとなるマテリアルを蓄積し続けていくことも重要となる」という、2つ目のアプローチで、ここのアプローチのそれぞれの目的を書いているところであります。
「こうした観点から」と、少し前の段落との裏表になるんですけれども、政府は、今後以下の4つの取組を進めていくことが求められると。まず1つ目が、マテリアルテクノロジーに対する具体的要請から導かれる重要技術領域を育成、実装していくこと。2つ目としまして、マテリアルの魅力を追求する研究開発を腰を据えて推進していくこと。3つ目としまして、研究開発活動の生産性向上。4つ目としまして、必要となる関連取組。こうしたものを総合的に推進することで我が国のマテリアルテクノロジーからイノベーションが創出される可能性を最大限に高めていくことが望まれると。また、大事なこととしまして、これら4つを単独で推進するのではなく、有機的かつ一体的に推進していくことが求められるとしております。
次のページ、7ページ目であります。具体的取組の方向性であります。
イノベーション創出を牽引するマテリアルテクノロジーの重点技術領域の推進であります。大学等の研究開発現場から生み出される多様な知を、戦略的かつ重点的にまずは融合等を通じて育成するとともに、スピード感をもって社会実装につなげていくという、この2つのアクションが求められるとしております。
この抽出に当たっては、先端技術分野あるいはSociety5.0、SDGs、パリ協定、こうしたもの。さらには、そのほかの国内外の様々な重要課題の解決の貢献において、マテリアルテクノロジーの革新が鍵となる技術領域を抽出することが重要であるとしております。
「例えば」ということで、9つの技術領域を提示しております。委員会での議論を、まだ十分に行っていただいてはいないのですが、事務局の方でこうした社会背景と研究開発戦略に記載されていた領域等を分析いたしまして、例示という形で、ここに記載させていただいております。これはあくまでも暫定的なものですので、今後、更に詳細な検討を進めていくことも記載させていただいております。
まず1つ目が「センサ技術」であります。次に「素子・デバイス技術」、3つ目に「バイオ材料・デバイス」、4つ目に「電池技術」。ここを「材料」としなかったのは、最後のシステムのところも大事だと思い、「電池技術」と書いているところがあります。そして、先ほどから御議論いただいていますけれども、「超性能材料」、かなり広い概念であります。
また、界面のところ、「接着・接合技術」であります。ここは先ほどおっしゃったような微細加工なども含めることができるのかなと、今、聞きながら考えておりました。また、「分離技術」。そして、「元素戦略」、最後に我が国が強みを持つ「分子技術・空間空隙制御技術」。実はこの「元素戦略」とか「分子技術」というのはどちらから見るかという問題で、技術的には近いところもあります。これは全てが完全に相反するものではないですが、軸をしっかりと立てるときにどういう軸を立てて、様々な分野の研究者が一堂に会して研究を行って、そこに産業界も入ってくるか。一つの方法としては拠点のような形もあると思いますが、そういうものをやっていくときにどういう柱を立てていくのがベストなのか、キーワードとなる言葉を御議論いただければと思い、事務局で抽出させていただきました。
また、次ページです。ここから進め方の話になりますけれども、こうした技術領域の推進に当たっては、中長期的な視点から技術目標を設定することが求められる。ただし、単線的な課題解決を目指すのではなく、それぞれが多岐にわたる方向への応用可能性を有することを踏まえた上での柔軟な目標設定が望まれるということ。
まず重要なことは、知の育成であります。大学や国研が中核となり、国内外に開かれた環境の下で、異分野の優れた人材が結集、融合して、切磋琢磨を図ることが重要であると。単純に応用研究に進むということではなくて、こうした融合の育成の期間が重要であることを書いています。
また、知の社会実装に当たっては、産学官の横断的な連携の下で、社会実装の研究と基礎研究とが相互に刺激し合い、スパイラル的な融合型研究開発を進めていくことが重要な手法となるともしています。加えて、プロセスサイエンスの取組を併せて推進することも重要であるということで、先ほど前田先生がおっしゃったシステム化の話もこうした部分に追記できるのではないかと考えていたところであります。
また、現在こうした視点に基づき、マテリアルテクノロジーという切り口で研究開発活動を戦略的かつ一体的に支援する政府の取組が十分ではないとの認識ですので、取組の一層の強化が求められると記載させていただいております。
2つ目、魅力的なマテリアル創出基盤の構築ということで、2つ目のアプローチの重要性を書いております。
研究者の探求心に基づき、腰を据えてマテリアルの魅力を追求することは、マテリアルテクノロジーの根幹となる活動である。魅力的なマテリアルは魅力的な機能を宿し、その後、当初誰もが想定し得なかった応用領域のイノベーション、破壊的イノベーションを実現することにもつながると。
こうしたイノベーション創出の可能性を最大限高めるためには、挑戦心を持った優れた研究者、特に若手研究者が、短期的な成果の有無にとらわれることなく、一定期間、腰を据えて研究を実施し、また研究時間を十分に確保できる環境を整備することが重要である。加えて、異分野融合の場を設けることや、国際連携活動を積極的に促していくことも重要となると。マテリアルの魅力を追求できる研究者を大学等の研究開発現場において拡大できるような政府の取組が求められるということを書いております。
実はこういった分野別の研究開発戦略で、このような記述は過去のものを見ていると、あまりない記載ではありますが、やはりいろいろ御意見等をお伺いしまして、2つのアプローチが大事であるということはしっかり記載しないといけないと感じまして、今回、この(2)のところを設けさせていただきました。
また、(3)研究開発の効率化、高速化、高度化を通じた生産性の向上であります。
こちらの夏の一次報告の際に御議論いただいた内容をブラッシュアップする形をベースに記載させていただいております。9ページ目です。研究環境と研究手法の改革を戦略的に進め、研究開発の一層の効率化、高速化、高度化を実現することが求められると。これにより、生産性を徹底的に高め、この研究開発環境が、世代、性別、セクター、国籍を越えたあらゆる研究者にとって、マテリアルテクノロジーの研究環境が魅力的になることが求められるという目的を記載しております。
次に、共用プラットフォーム、スマラボ、MIと、3つ、重要な取組を記載させていただいております。
まず共用プラットフォームです。マテリアルテクノロジーに係る研究開発活動で利用する先端設備・機器は極めて重要な存在であり、そうした設備・機器の共用とネットワーク化を、これまでの蓄積を生かしながら継続的に強化していくことが不可欠であると。その際、異分野融合による研究開発が今後主流となり、スケールの対象もナノから量子、ナノからマクロといった流れとなる中で、これまで以上に複雑な現象を計測、分析できるような先端的な機器が必要となることが想定されると。
このため、今後のネットワークの発展に当たっては、こうした共用取組、あるいは老朽化、陳腐化への対応のみならず、先端機器開発の取組と連携して推進することが極めて重要であると。また、研究機器の実験のハイスループット化、あるいは効率的な地域別の共用体制、あるいは計算・データ基盤との連携強化、こうしたことについても今後検討していく必要があるということを今後のナノテクプラットフォームの在り方の方向性ということで、記載させていただいております。
また、スマラボに関しましては、研究者の創造力を最大限発揮できる環境整備と研究成果の創出加速の双方を目的とするスマートラボラトリの取組を普及していく必要があると。実験室での繰り返しの単純作業から研究者を解放し、次の時代にふさわしい魅力的な研究スタイルへの転換を促すとともに、質の高い実験データを効率的に収集、蓄積することで研究成果の創出が加速する事例を蓄積し、そこで得られたデータから更に発展的な研究開発へと利活用していくことが重要であると記載しております。
最後に、MIですけれども、マテリアル創出の高速化に向けて、データ駆動型の研究開発を強化することが重要である。各機関においてデータの利活用を促進するためのアプリケーション開発の取組、革新的な材料開発手法の研究開発を推進し、この分野において世界の主導権を握っていくことが求められるとしております。
最後、(4)です。2つ目のポツであります。
まずイノベーションの創出に当たって、大学の産学連携支援体制がいまだ十分に整備されていないこと等により、大学で生み出されるマテリアルテクノロジーの新たな知が、結果的に社会実装に至らず、知の持つ価値を十分に発揮できない要因となっていると。
また関連する人材ですね。大学教員の社会実装活動を支援する人材の育成・確保、大学教員評価の在り方の検討・導入など、関連する組織的取組を強化していくことが求められる。
あるいは国際的な取組であります。国際動向を継続的に調査・分析し、ここが重要ですが、適切に国際連携の在り方を明らかにすることも重要かと思います。また、4行目、優れた外国人研究者を我が国に引き付け、定着を促すための取組を充実していくことも重要となると。他方で、マテリアルテクノロジーの特性に鑑み、機微技術の国外流出等に対するセキュリティや安全保障貿易管理についてルールに基づき適切に管理していくことが求められるという記述も記載しております。
次に、ELSIであります。マテリアルテクノロジーの推進に当たっては、常に未知・新規のマテリアルの登場が伴うことから、マテリアルが社会に与える影響を推定・評価し、分野や世代、国を越えてコンセンサスを形成していく取組が重要であるとしています。
最後です。次世代を担う人材の確保です。研究のおもしろさ、マテリアルの魅力等についての研究開発現場からの発信を強化するとともに、政府もマテリアルテクノロジーを、未来ある科学技術、未来を創り出す科学技術として発信していく必要がある。マテリアルテクノロジーに関連する学位を持つ人材は産学官の至るところで活躍していると。こうした状況を踏まえつつ、学位取得や研究職の魅力について、関係者は総力を挙げて広く発信するとともに、コミュニケーションを重ねていかなければならない。加えて、処遇ですね。こちらも充実していくことが必要であるということを記載しております。
「おわりに」であります。2つ書かせていただいております。
本提言は、第6期基本計画に向けた検討の参考となることを目的として暫定的に取りまとめたものであり、本委員会では、今回は、1.2.の、いかにマテリアルテクノロジーが重要かというところを中心に、背景の部分の整理をかなり充実して記載しておりますけれども、今後は4.で記載した具体的取組を中心に、更なる検討を行う予定としていると。この委員会でも今後引き続き御検討いただく予定にしております。
また、我が国が本格的にマテリアルテクノロジーの強化を図っていくためには、産学官共通のビジョンの下で、大学や国研の取組のみならず企業の取組の方向性も含めた、政府全体のマテリアルテクノロジーの推進方策の検討を進められていくことが重要であり、今後、関係府省が連携した検討の実施が望まれるという、今後の方向性についても記載させていただいております。
取組に関しては、このほかにもいろいろとあるかと思いますけれども、御議論の方をよろしくお願いいたします。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。
それでは、ただいま御説明いただいた、3番、基本的な推進の方向性、さらには具体的な取組、先ほどの議論の中でも種々出ておりましたので、そのあたり含めて、「おわりに」まで議論をいただきたいと思います。御意見、よろしくお願いします。馬場先生。
【馬場委員】 具体的な取組の方向性以下、非常によくまとめていただいており、感謝申し上げます。
7ページ目の4の(1)の2ポツ、2つ目の丸で、その前にもAI、バイオテクノロジー、量子技術と、これはそれぞれの戦略の、今の策定の内容ということで書かれているんだと思うんですが、バイオテクノロジーがバイオ戦略の中で、私、バイオ戦略の議論に入っていませんが、資料を見る限り、バイオエコノミーが中心になっていますよね。バイオテクノロジーとバイオエコノミーは随分中身が違っているという感じがしておりまして、特にマテリアルテクノロジーはバイオエコノミーにすごくよくフィットすると思うんですよ。バイオテクノロジーというと、例えばここにいらっしゃる先生方、あんまり関係ないやと思われる方、多いと思うんですが、バイオエコノミーを今、バイオ戦略で言っている理由の一つは、2030年か40年にバイオエコノミーの中の世界のマーケットの4割は工業分野であるという予測がOECDでされていまして、そういう意味では、まさにその中の我が国の特に大部分はマテリアルテクノロジーだと思うんですね。
そういう意味では、バイオテクノロジーと言っちゃうと、従前のバイオテクノロジーになっちゃうので、もしかしたらバイオ戦略とかバイオエコノミーという言葉にしていただいた方が、このマテリアルテクノロジーを押し出す上では、押し出す先としても非常にうまくバイオ側への、マテリアルテクノロジーの出口としてはより分かりやすくなると思いますし、多分、経団連なんかでもそういう議論がされているというふうに伺っていますので、そこを少し言及いただければと思います。これは前のところにも少し書いてあったと思うので、そこも含めて少し御検討いただければと思います。
【五十嵐主査代理】 貴重なコメントありがとうございます。
そのほかありませんか。
【吉江委員】 例えば自らの研究時間を十分に確保しとか、8ページ目の下から2番目の丸の辺であるとか、最後の10ページの真ん中辺の丸に、若手を育てるというところを丁寧に書いていただいて、私、この辺が一番気になっていたので、本当に感謝しております。
今、私がコメントしたいと思ったのは、先ほど前田委員から、システムというキーワードが出てきたと思うんですけれども、もしかして私だけだったら申し訳ないんですけど、これはすごく大事だと思っています。今まではナノテクの範囲ではないような、分野が違う気が漠然としていたんですけれども、改めてこのシステム化はどこの分野なんだろう、誰がするんだろう考えたときに、もちろん、例えばエレクトロニクスでも他分野でも専門家がいらっしゃいますが、ナノテクに直接、そこから製品になる先のシステム化というところで、該当する方が見当たらない場合というのがかなりあるんですね。だから、先ほど領空侵犯というようなキーワードも出ていましたが、むしろ領空侵犯ではなくて、空白を埋めていくような作業になるのかなと。そこにはやっぱり、ほかにいないのであれば、ナノテク分野の研究者が出ていくしかないんじゃないかなという意味で、先ほどの前田委員の意見というのが非常に大事な点だったんじゃないかなと思います。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。今のシステム化に関しては、恐らく先生方、いろいろ御意見あるんじゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
【栗原委員】 今のシステム化の話ですが、私は必ずしも詳しいわけでないので、もっと専門の方がいらっしゃると思いますが、材料からシステム化と考えると、幾つかの材料を組み合わせると、それぞれが一番いいものを組み合わせたからいいというわけではないという話がよく出ますよね。だから、そのような観点で見れば、材料もシステム化を見据えつつの材料開発があるのではないかと思うのですけれども、相反するような特性というような観点だったら材料システムでもあるだろうし、回路だったら、必ずしも材料の分野ではないのではないかと思います。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。
そのほかありませんか。
【湯浅委員】 8ページの中頃より少し上のところで、プロセスサイエンスについて強調されていますが、私もこれは非常に重要な技術だと思っています。特に学術界で開発された新しい材料がなかなか産業界に結び付かない一つの要因は、このプロセス技術でうまくいかないと。産業界では、この分野を受け持っているのは、製造装置メーカーなんですが、私も製造装置メーカーといろいろ研究開発を一緒にやっていまして、彼らは決して基礎研究開発能力が余り、リソースも含めて高くないと。しかも、この分野というのは学術界からのサポートも十分でないので、ここをいかにこれから我々大学や国研がサポートしていくか。これが非常に重要だと思いました。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。
武田さん、どうぞ。
【武田委員】 今のお話に関係しますけれども、産学連携の支援体制、あるいは社会実装が非常に重要です。今、何が足りないかというと、産業界側から見ると、やはり大学での優れた研究開発成果があって、それを導入して、事業化の方に持っていきたいと考えたときに、将来、企業にとって、利益を生むようなものになるかどうかというのは、大変大事です。なかなかすぐに利益を生まないものに対して、それを長期的な形で事業化までサポートできるような体力を持った企業というのは本当に限られているわけです。それで、やはりそこに対する支援体制も必要になります。すぐに事業にはならないのだけれども、10年後、20年後を見据えたときに、日本の科学技術でもって、社会を変えていくというような技術の場合は、企業側も十分にみずから体力がなくても、そういう支援を受けられて、持続して、アカデミアの成果を社会実装するという仕組みというのがもう一つあればよいと思います。そういう意味での社会実装に向けた産学連携のシステムとして国家プロジェクトなり、補助金の制度なり、そういったものがあっていいというところも提言として盛り込むといいのではないかと思います。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。
ちょっと私、発言させていただきたいんですが、社会実装とシステム化というのは似たような言葉に使われる場合があるんですけれども、少し違う側面があると思います。いいものができたとしても、経済的に成り立たないから、社会実装されない技術というのはたくさんあるんですよね。でも、それはいつか本当にそういうニーズが高まれば必ず実現すると。
例えばガソリン自動車が将来走らなくなるなんて、90年代には考えられなかったことかなと思うんですけれども、それこそ吉野先生のリチウムイオンバッテリーができて、そして、環境問題がこれだけクローズアップされた。それでどんどんEV化に動いているということだと思うんですね。
ですから、社会実装に、やはり基礎研究、この提言(案)の中でも、基礎研究をいかに社会実装につなげるかという大命題がまずあるんですけれども、それともう一つ、先ほどから言われているシステム化に関して、材料科学あるいはナノテクノロジーがいかにシステム化に貢献するかというのは少し別の議論が必要かなと思っていまして、私は、例えば先ほど電力システムのお話をされたんですけれども、ここはやっぱりいろんなシステムの組み合わせで、最適な電力供給網を作ると。それにはいろんな、例えば電力をいかに作るか、それから、どう送電するか。それをどこでどう最適化するかというような、それこそシステムですよね。
そういうシステムの組み合わせの最適化みたいなことかなと思うんですけれども、そのナノテクとか材料がマテリアルテクノロジーでシステム化に寄与するというのは、マテリアルの機能を最大限発揮する、あるいはニーズに対して特定の機能を発揮させることができると、そこまで踏み込んだ材料開発なり、物の作り込みをやると、それはシステム化になっているんだと思うんですよ。ですから、何かそういう、単に物を作る機能を発現させるだけじゃなくて、ニーズに応じて材料を作り込むとか、何かそういう。私、最初に物から事に変わるという言い方をさせていただいたんですけど、何かそんなことじゃないかなというふうに感じています。
【前田委員】 全くそうだと思います。きのうの堀場雅夫賞の授賞式のときの話になっちゃうんですけど、委員長の吉野先生以外に、委員の先生もいろいろ発言をなさっていて、とんがった一つの技術、材料を、論文は書けるんです。でも、それを上手に組み合わせて、一つのものにしたり、システムにすると、意外に論文書けなくて、ここの分野というのは、一研究者が自分の論文を出したいと思うと、手を出しにくい分野なのに、ここに皆さん手を挙げてくださって、一生懸命取り組んでいることは価値が高いですというのを発言してくださっていたんですね。
やはり日本というのは、一個一個のパーツですごくいいものを持っていても、違う国でそれを実現化されて、地球規模で言えばいいのかもしれないんですけど、やっぱり国費を使って研究してもらう以上、それが日本で実現されたいなと思っているので、本来、領域ではないかもしれないけれど、システムのところで上手に使われるようなマテリアルテクノロジー、マテリアル材料をちゃんと生み出しましょうよというのは書いてもいいんじゃないのかなと私は思っているんですね。
【五十嵐主査代理】 おっしゃるとおりだと思います。ですから、異分野融合という表現はあるんですけれども、そこをもう少し具体的に表現できればもっと分かりやすくなるということですね。
どうぞ。
【常行委員】 私、今のお話を聞いていて、言葉が分からなくなったんですが、システムというときは、社会システムとか、スケールの違うものがいろいろあるので、聞く方も混乱するんじゃないかとは思うんですけど、材料だったら、デバイスという言い方を少し間に挟んだ方がよろしいんじゃないかなと。それは何かしらこの委員会としても書き込めることがあるんじゃないかなという印象を持ちました。
【五十嵐主査代理】 どうぞ。
【高梨委員】 ただ、デバイスだけではないですよね。だから、そこは、デバイスと言うと、今度は何かエレクトロニクス的なそんな感じだけに、イメージとしては限定してしまうような感じがあるので、そこら辺の言葉の使い方は気を付けた方がいいと思うんです。
それからあともう一つ、私、今の御議論で蛇足みたいになるんですけど、さっき湯浅さんが言った、要するに、プロセッシングですよね。結局、システムに行くためのプロセスで、これはもうマテリアルテクノロジーのまさに延長として、まさにそこの中に入るもので、やっぱりそこをもっと強調する。それで、そこが日本は本来、プロセスも含めて強かったはずのところが、今、そこが危なくなっているので、さっき論文の話が出ましたけど、プロセスで論文を書いて、サイテーションを稼ぐということがなかなかできないので、大学なんかでもプロセスをやっている人間というのはどんどんいなくなっちゃっているという、そういうこともあるので、やっぱりシステム化のためのプロセッシングというのは、いくら強調しても悪くはないと私は思います。
【五十嵐主査代理】 どうもありがとうございます。
菅野先生。
【菅野委員】 今のことに関連してなんですけれども、8ページの社会実装云々というところ。システム化に関してです。一昨年、2年前でしたかね。マテリアライズの議論を多分したと思うんですけれども、マテリアライズというところが、材料からマテリアライズというのは、材料の組み合わせで、あるデバイス。(我々に対しての蓄電池なんですが)特性を最適化するという、材料から少し出たところも、それも材料に含まれます。マテリアライズというところの観点。
それから、その後、システム、産学連携の下にとありますけど、社会実装に向けた産業との連携の下でとありますけれども、産業とどのようにつなげるかというところですね。産業にどのようにつなげるかというのは、前回の議論で、それは産業の方の課題で、ここで議論するところではないという射場委員の指摘がありましたけれども、ここには2つの、別のものが入っているような気がします。上の産業側から見た見方と、要するに、産業側から産業にするにはどうするかという見方と、それから、材料をマテリアライズして、その基となるデバイスに仕上げるというボトムアップの見方と。そこを少し切り分けて、この記述があるといいように思います。
【五十嵐主査代理】 どうもありがとうございます。
そのほかありませんか。どうぞ。
【萬委員】 さっきの議論、基本的に私も大賛成で、皆さんが言われたとおりなんですけれど、この8ページの(2)のところで、例えば上の丸は、当初、誰も想定し得なかった何かが出てくるということで、ある意味、自分は応用は分からないけど、誰かが見つけてくれるという視点。これは材料の中ではあるとは思います。ですけど、この下に書いてある、次の丸のところの「様々な応用領域等からの着想を獲得するために」という、ある種の目的志向ような姿勢というのも強調しておいた方が良いと思います。これは特出ししてもいいんじゃないのかなと思います。
やはり何が必要なのかという発想を持ってやるかやらないかで、開発の時間軸も違いますし、効果も、社会的に与えるインパクトも全く違ってくると思います。そういった視点を入れれば材料が材料だけにとどまらず応用領域とつながっているという印象を与えることにもなると思います。
【五十嵐主査代理】 どうもありがとうございます。
どうぞ。
【中山委員】 いろいろありがとうございます。6ページの3ポツ、「異分野融合、産学官融合の2つの融合促進を通じて」の融合のところです。これをより強調してほしいなというのは一貫した思いですけど、そこで「イノベーション創出に効果的につなげていくことが求められる」とありますが、実際にはもうかなり競争力につながってきたのだと思います。もう枚挙にいとまはなく、例えば電池はエネルギー分野との融合、横断。電子デバイスだったらICTとの融合、横断。再生医療材料だったら、これはもうライフサイエンスとの融合。センサだったら、やっぱりICT。分離だったら環境。MEMSとか機械とかもICTなどとの融合です。計測なんかは全分野に亘ります。磁石もエネルギーの効率的な使用に相当な寄与をするもので、相当な横断領域だと思います。ロボットも材料を中核の一つとして、極めて横断的なものです。そういうことで、これから効果的につなげていくというよりは、更に強力に先導していくとか、よりパワーアップした言葉で、これまでもやってきて、今後もやっていくぜというような、そういうことがいいのではないかと思います。
こんなに成果が出ている領域は他にはないぐらいだと思います。産業競争力、輸出競争力につながっているところに自信を持って、更にその先につなげていくということが大事です。そのためにはこういう一連の戦略が必要だよというようなことだと思います。それはやっぱり他分野を横断したところ、融合、そして、産学官もしっかり融合してきたからこそ、これらのものが産業とか外貨の獲得につながっているわけで、ここも大きく自信を持って強く書いていただけないかなと思います。
以上です。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。
宝野先生、どうぞ。
【宝野委員】 前半で少し議論になったんですが、やはりこれを見ていまして、超性能材料というのがちょっとしっくりこない。具体的な例が書いてあると、重点分野というように受け取られていきますので、ここの部分はもうちょっと考えた方がいいんじゃないかなという気がしますね。
具体的にどういう意味で書いてらっしゃるんですか。
【竹上専門官】 タンイ環境などのイメージです。
【高梨委員】 いいですか。超性能という言葉はやっぱりちょっと、何かうまい言葉に変えたいですよね。ただ構造材料と言うのも不十分だし。
【竹上専門官】 まさに構造材料が、更に新しい革新的なイメージを持つ構造材料みたいな形にしたいと考えていました。
【宝野委員】 その言葉を書かれたらどうですか。
【高梨委員】 ちょっとあと、よろしいですか。
【五十嵐主査代理】 どうぞ。
【高梨委員】 関連してというか、さっきのプロセスとも関係するんですけど、細かいのかどうか分からないんですけど、粉末粉体とか、そういうプロセスとか、そこら辺もやっぱり非常に重要だという感じがするんですよね。構造材料にはもちろん重要だし、磁石にも重要だし、そこら辺、やっぱりプロセスとして、あと、今、随分、水を空けられちゃったという話もあるけど、積層造形なんかにももろに関係してくるものだし、そういったものというのは、言葉として入れておかなくていいのかなというのはちょっと感じるんですけれども。
【五十嵐主査代理】 確かにナノマテリアル、粉体、粉末といいますか、そういうのが、いろんな特異な機能が発現して、今後、更に活用される可能性があるわけですよね。そういうのをなかなかうまく表現するのが、粉体、粉末と言われると、ぴんとこない人の方が多いんじゃないかなと思うんですよね。
【高梨委員】 機能だけじゃなくて、何をやるのもやっぱりプロセス、それが基になることが多いじゃないですか。
【五十嵐主査代理】 そうですね。先ほどの微細加工と併せて、何かそういう特殊な技術ですよね。
【高梨委員】 そうですね。
【五十嵐主査代理】 どうぞ。
【宝野委員】 ですから、今、高梨委員がおっしゃっていることは、プロセスサイエンスでくくると。それで、企業では一生懸命プロセスをやってらっしゃるんですけど、やはり何が起こっているかという理解なしに進まないと思うんですね。それで、プロセスで企業と競争しても勝ち目はないから、やはりサイエンスの部分は、大学や国研で明らかにしていくというので、そのプロセスサイエンスを前面に出せば、そこはカバーできるような気がするんですけど。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。
どうぞ。
【常行委員】 9ページの上の丸のところで、ナノテクプラットフォームについて記載されていまして、これは大変大事な施策だと思っています。前回も栗原委員から意見がありましたけど、明示的にソフトウエアという言葉をどこかに出していただけないかなと。
というのは、例えばその段落の一番下の「計算・データ基盤との連携強化」という言葉があって、ここにシミュレーションとか、それから、マテリアルズ・インフォマティクスとか、そういうところが入っているのだと思うのですけれども、ここがかなり弱くて、検討していく必要があるとのことで、それから、計算とかデータ基盤というと、これは計算機であったり、データベースであったりという、物のところの印象が非常に強くて、ソフトウエアというのは常に軽視される。これがないと、もう何も使えないので、そこを何とか出して、言葉として出していただいた方がいいんじゃないかなという印象を持ちました。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。
どうぞ、栗原先生。
【栗原委員】 実は私も全く同じ発言をしようと思っていたところです。やはり今後、このナノテクノロジープラットフォームのところに書かれている、スケールもナノから量子、ナノからマクロというふうになると、従来持っているだけの研究のアプローチで十分なのかということは非常に課題だと思います。やはり研究のアプローチは、常により高度に、強力なものにしていかなければいけなくて、今、新しいものとしたら、やはり情報とか計算があると思うので、それとの連携は非常に重要なのではないかと思います。
「富岳」ですけれども、常行先生は御専門ですけれども、「京」から「富岳」で、アプリケーションの開発をやって、有限要素法でやれるような計算は従来からかなりありますけれども、やはり原子とか分子の材料の計算は、ここの2つのプログラムで非常に進んだと思っています。
そういう基盤を今、活用できるようになったところなので、是非そういうものとの連携というのを大事にしてやっていくのがいいのではないかと思うところと、また、NIMSでやっているデータ駆動型の研究開発は、データだけでは難しく、やはりあそこでの伝統あるコンビナートリアルサイエンスとか、更に計測、シミュレーションとか、いろいろな材料を作るところと、計測と計算と情報というのは、これを組み合わせて融合することで、新しいアプローチが出て、より高度化していくのではないかと思うので、そういうようなところをプラットフォームだけに全部を書き込むのは難しいでしょうが、情報とか計算とか、全体の研究方法の高度化とかが分かれていろいろ書かれているので、もう少し整理できるのかなと思って、拝見しました。
【五十嵐主査代理】 そこの部分は表現を少し工夫する必要がありますね。
【竹上専門官】 今まさに、8ページの一番後ろの部分に、横串的なイメージとして、この研究フローの蓄積に、「AI、IoT、ビッグデータ等のサイバー技術を効果的に導入」までは書いているので、横串的な概念として、まさにこうした技術の発展というのは、研究基盤の今後の在り方に全て影響を与えますので、一番上のポツの部分に、今おっしゃったような工夫ができればいいかなと思っています。
また先ほどの7ページの技術の部分ですが、イメージとしては、まだ今後どうなるか分からないのですが、まさにフラッグと言いますか、何か人を集めるときに、フラッグとしてこの技術をバッと立てたときに人がバーッと集まるぐらいの粒度と言いますか、そうした名称でそろえると良いと思って、今、書かせていただいています。超性能のところをどうするかという話や、先ほどの微細加工のような話は、例えばCRDSさんが作っている俯瞰報告書であれば、積層であるとか、接着であるとか、接合であるとか、こうしたものは全部、加工プロセス技術のような形になりますが、それだと広過ぎる感じもしますので、その中で本当にこれからコアとなるような部分をまとめた概念として、高層化技術なのか、何なのか。その辺のアイデアですね。もし頂くことができれば非常に有り難いなと思っているところであります。
【五十嵐主査代理】 湯浅委員、どうぞ。
【湯浅委員】 その点、コメントしようと思っていたんですけど、微細加工というと、小さなパターンをひたすら作るように思われるところもあると。今、半導体分野では、もう二次元平面上に小さなパターンを切る、いわゆるムーアの法則がもうすぐ限界に来ますので、三次元構造を作って逃げているわけですね。三次元化というと、もう微細パターニングとプロセスと材料の三位一体の非常に複雑なプロセスになりますので、だから、三次元微細化。何でしょうね。いい言葉。言葉としたら三次元化だと思いますね。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。
どうぞ。
【馬場委員】 7ページ目の具体的な取組の、今、議論になっているところですが、これは前回まとめていただいたマテリアル革命の中にも取組が幾つか書かれていると思うんですが、それに加えて、これというイメージですか。
【竹上専門官】 一応整理として、これはあくまでも事例ですが、マテリアル革命の際にまとめていただいた様々な領域中から、まさに冒頭申しましたような、様々なところで材料の革新が致命的に重要になっていくと。そうしたところの技術が一方向だではなく、様々な方向に大事になってくる技術をある程度まとめて推進していく際、ちょうど良い粒度にしたものなので、ピックアップしているという形ですね。
だから、この部分に書いてあるものの中からとりわけ次の5年、10年において、このかたまりが一番重要になってくるのではないかと思われるところを技術あるいは材料、そういう形で抜き出させていただいたキーワード。これは多少重なる部分は出てくると思っておりますが、キーワードとして掲げたときに、優れた多様な研究者が集まって、いい成果を出していただく、あるいは産業界にしっかりとつながっていく、社会につながっていく、そういった領域がどこなのかという形で同定しています。
ですので、あまりに狭過ぎても多分だめでしょうし、広過ぎるとだめでしょうし、革新的と言いますか、新しさのようなものがないとだめなのかなと思っているところです。
【馬場委員】 ありがとうございました。あともう一つ、10ページ目の3つ目の丸の次世代を担う人材の確保というのが非常に重要であると我々も認識しているんですが、その中で今、我々の大学でちょっと議論しているのが、今までの学位のやり方だけでいいのかと。先ほどから議論になっているプロセスとか、それから、システム化とか、そうすると論文が出ないから大学ではできませんという話になるんですが、それは大学の評価基準が論文だけに偏っているからであって、学位も論文だけに偏った学位しか出していないと。
シンガポール国立大学がイノベーション学位というのを始めたそうで、それは今までの学位とは違って、論文が必ずしもなくても、イノベーションにつながる評価があれば、学位を出すらしいですね。それで我々のところでもそれを本当に必要かどうかという議論を始めているんですが、ここに書いていただく必要があるかどうか分かりませんけれども、将来的にはそういうことも含めた議論をしないと、いつまでたっても大学は論文だけで評価されて、先ほど前田先生のお話にもあったように、プロセスをやると、大学では全く評価されない。どこでも評価されないということになるので、その人材育成という観点からも工学研究科だと、学位を取って企業に行く人は非常に多いんですよね。そのときに、本当に今までどおり、論文だけで評価して、学位を流用するのかどうかというのはもうそろそろ議論した方が、実際にこのマテリアルテクノロジーを本当に実現していく上では、そういう人たちは絶対必要な人材だと思いますね。そういうことも、ちょっとここの中に書き込めるかどうか分かりませんけども、今後の議論としては重要な方向ではないかなと思っております。
【五十嵐主査代理】 非常に大きな問題提起かなと思います。どうもありがとうございます。
宝野先生、どうぞ。
【宝野委員】 先ほどのコメント、非常に興味深いんですけど、恐らく大学が論文を書くことをやめたら、確実に研究の質を維持することができなくなると思うんですね。そういった議論は、国の研究所ではもちろんありまして、論文を書かなくなるとやはり外から見て何をやっているのか分からない。ですから、大学の役割というのはそういうイノーベティブな研究をやっていても、それを論文として外部に発信できる人材を育てる。それに尽きると思いますね。それを放棄したら、大学の質というのは、あっと言う間に悪くなっていくと思います。
コメントです。
【馬場委員】 宝野先生のおっしゃるとおりで、我々はもちろんそれを放棄するつもりはありませんが、そういう意味では、議論を始めているというか、本当にそれが実際に世界的にそういうことをやっている大学が出始めた中で、本当にそれが大学にとってどういう役割を果たすのか、本当に必要なのか。あるいは従来どおり論文だけで行くのかというのは、今後の議論なんですけれども、でも、やはりそこを考えないと、いつまでたっても大学と産業界の間がギャップがなかなか埋められないのかなと時々思うんですけれども。
以上です。
【高梨委員】 済みません。ちょっとお聞きしたいんですけど、その場合、でも、学位論文は書くんですよね。学位論文すら書かないんですか。
【馬場委員】 学位論文は書きます。
【高梨委員】 ですよね。だから、やっぱりちゃんと起承転結を付けて、論理的にきちっとした、ものを作るのは重要ですね。
【馬場委員】 おっしゃるとおりです。
【高梨委員】 そういうものはちゃんとやらないと、本当に何なんだろうという気がしました。
【五十嵐主査代理】 その点に関していろんな議論があるかと思いますが、きょうの議論から少し横に置かせていただきたいと思います。ありがとうございます。
そのほか御意見ありませんか。どうぞ。常行先生。
【常行委員】 非常に素人発言で申し訳ありません。プロセスのお話で、というか、プロセスのシステムの話ですが、私は理論の研究者なので、ちゃんと実情を把握しているわけではないんですが、プロセスとかシステムを大学の研究室で研究するというのは物すごく大変なのではないかと。それは本当に大学でやれることかというのは感じるんですね。むしろ企業はそれをまさにやってらっしゃるし、それから、産総研とかNIMSとかですね。そういうところはもしかしたらできるかもしれないけれども、本当に個人の小さな研究室ではちょっと手が出ないようなところがあるように思うんです。
それで、前半の議論で、日本の論文数が減少したというときに、実はかなり企業の部分が減っているところが大きい。これは資料の後ろの方をめくると出てきますけれども、そういうところに余り企業が投資できなくなってきている、しなくなってきているというのがもう一つの問題かなと思っています。
ですから、何を言いたいかというと、ちょっとまとまらないんですが、もはや企業単独ではできないかもしれない。だけれども、大学の研究室でもこれはできる話ではなくて、やっぱりそれをどうやって一緒にやれる環境を作れるか。オープンイノベーションの関係を作れるかというところが大事だというところを強調すべきかなと思います。
【五十嵐主査代理】 どうもありがとうございます。
今の御質問で、プロセスの研究は大学でできないかといえば、私は機構解明ですとか、例えば今まで硝酸で溶かしていたやつをこれを熱処理で代替しますとかね。そういう研究はできるんですけど、企業がやる大規模スケールで、そこの部分はもちろん大学では難しいと思うんですよね。やっぱり違う方法を見つけるというのが、そういう研究であれば、できるんじゃないかなというふうに思います。
【常行委員】 多分個々のプロセスのここの部分とかそういうのだったら、大学はいっぱいできると思うんですけれども、全体をやるのは難しいかなと。
【五十嵐主査代理】 いろんな御意見を頂戴して、少し時間が押してきたんですが、具体的な取組のところで特にもう少し発言されたいという方はいらっしゃいますか。どうぞ。
【湯浅委員】 今の件で若干発言よろしいですか。時間が押しているときに。例えばプロセスを担当している製造装置メーカー、プロセステクノロジーがすごい得意ですけど、その下支えになるプロセスサイエンスが弱いんですね。ですから、そういうところと大学が組んでやればサイエンスの部分が補完できると思います。
【五十嵐主査代理】 どうもありがとうございます。
それでは、時間も大分押してまいりましたので、最後に全体を通して、御意見、感想ありましたら。いかがでしょうか。
きょうはたくさん御意見頂いたんですが、提言の最後の「おわりに」のところに書かせていただいておりますように、この検討に関して、来年夏頃までをめどにもう少し具体的な取組を中心に、更に検討を行う予定としております。それに向けて、きょう頂いた御意見はできるだけ反映した形で修正案というのを作成することになると思うんですけれども、今後のそのあたりの進め方ですね。そのあたり、もし御意見ありましたら頂戴できますでしょうか。
きょう言い足りないというようなことがもしあれば、追加でまた。来週水曜日ぐらいをめどに御意見、メールで頂いても構いませんし、それ以外に、こんな議論、もっとやりたいというのがあれば、この場で御意見頂きたいですけど。
吉江先生、どうぞ。
【吉江委員】 済みません。そんなに全体的なお話はできないかもしれないんですが、最後に出てきたプロセスというキーワードがやっぱり少し気になっていて、というのは、先ほどコメントの中にもありましたけど、プロセス研究をしていたときに、なかなかサイテーションが取れないというような、例えばインパクトファクターの高いところに出せないというようなことが現状にはあります。それでもプロセスをやるべきなのか、大学の先生たちがやることをエンカレッジすべきなのか、そういう視点をディスカッションするのがいいと思いました。
私個人的には、それでもやった方がいいようなことを思ってはいるんですけど、皆さんがどうお考えかなというのがちょっと気になったところですね。
【五十嵐主査代理】 今の点、いかがですか。
【高梨委員】 いや、やった方が当然いいと思って、そこは、あとは評価ですよね。個人業績評価でどういうふうにしてそこら辺を取り入れていくかとか、あと、大学ランキングでも結局どういうふうに取り入れられるか。結局、サイテーションがかなり効いているランキングになってくるので、やっぱりそこら辺はもっと全体としての取組が必要だと思いますけど、当然やるべきだと私は思いますけど。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。どうぞ。
【宝野委員】 よろしいですか。大学の研究者がやるか、やらないか、完全に個人の自由ですから、その方がどういった価値観を持って取り組むかですね。ですから、評価システムを整えることに尽きると思いますね。
それで、インパクトファクターの高い論文に出すことが偉いのではなくて、その業界でも多くの人たちが読むような重要な雑誌もありますし、あるいはそういった重要な研究をすると産業界から研究費も来るでしょうから、それらを総合的に評価できるシステムを整えるということに尽きると思いますけど。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。
【前田委員】 まさしく宝野先生がおっしゃったとおり、私も同じことを言おうと思ったんですけど、特許の数であったり、民間にどれだけ貢献。貢献というのは、お金をたくさんもらうということはそれだけ役に立っている先生だということになりますので、もうまさしく研究機関がそれを評価基準の中に入れてくれればいいだけのことなのかなと思っています。論文1個で良い、悪いを判断するから、だんだんそういうプロセスをやる人がいなくなっていくので、入れてもらえばいいので、あと、研究者がどちらを選ぶかは研究者の個人の自由なんだと思っていますので、是非とも大学の方の評価基準を変えていただけるとうれしいなと思います。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。
湯浅さん、どうぞ。
【湯浅委員】 今の補足なんですけど、プロセス分野では、インパクトファクターの高い論文というよりも、採択率の低い国際会議の発表が非常に評価されるようなんですが、だから、その分野内ではそういう評価軸があるんですけど、全体でもうインパクトファクター重視となると、そういう分野の研究者は最近困っているらしいんですね。ですから、宝野さんが言ったように、評価軸をどうするかという問題だと思います。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。
どうぞ。
【栗原委員】 今の話ですけど、やはり大学は教育と学術の場なので、企業と同じアプローチでプロセスを研究するなら、大学でやるということは慎重に考えなくてはいけないと思います。アディショナルなアクティビティとしてやるならいいのですが、論文が書けない学生を育てたら、やはりおかしいのではないかと思うので。もう一つは、従来はどちらかというと、経験的だった技術をサイエンスベースで作り直すべきだということもやはりもっと考えられてもいいんじゃないかなと思います。これは宝野先生も先ほどサイエンスベースでやるべきだとおっしゃったので、共通の、同じ意見です。
【五十嵐主査代理】 ありがとうございます。
最後、武田委員、どうぞ。
【武田委員】 最後に産学官共通のビジョンの下で、とあって、やはり今これはキーワードだと思うんですね。大学が全てプロセスや社会実装まで見据えて、何か研究するというのがやはり無理があって、大学、企業とそれぞれ得意なところがあるので、分担という考えがあって、その分担が融合して、初めて、優れたテクノロジーが社会実装されていくと思います。産学官で共有されるビジョンというのはやはり我々の社会をよくします。その共通ビジョンは、マテリアルでより豊かで、より健やかな社会にしていくというところだと思います。
そこで大学の役割、企業の役割、そして、政府の役割があると思います。だから、最後に書かれてはおられますけれども、やはり共通のビジョンに向かってということでまとめていくといいのではないかと思いました。
【五十嵐主査代理】 どうもありがとうございました。
それでは、きょうは、種々御意見頂きましたので、これらの議論を踏まえまして、提言(案)につきましては修正するということで、一旦私がおあずかりしまして、最終的な修正は三島主査に御一任いただくということでよろしいでしょうか。
では、そのようにさせていただきます。どうもありがとうございました。
本日の議事は以上となります。
では、最後に、その他事務連絡を事務局からお願いいたします。
【高橋参事官補佐】 ありがとうございました。本日、本当に活発な御議論、大変参考にさせていただきました。
次回の第6回ナノテクノロジー・材料科学技術委員会につきましては、追って、開催日程を御連絡させていただきます。
また、議事録と資料につきまして、本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成し、委員の皆様にお諮り、また、主査代理及び主査に御確認いただいた後に、ホームページにて公開いたします。また、資料につきましても、今回配付させていただいたものをホームページに公開させていただく予定です。
また、本日の配付資料につきましては、封筒にお名前を書いて、机上に置いていただければ、後日、事務局から郵送させていただきます。
以上です。
【竹上専門官】 1点だけ。きょう頂いた御意見をこれから事務局で修正をしますが、具体的な修正の方法と、きょうお帰りになられた後に、もし御提案がありましたら、来週の水曜日までに頂けると、非常に有り難く思います。それを反映して、五十嵐主査代理、そして、三島主査に御相談させていただければと思っておりますので、よろしくお願いします。
【五十嵐主査代理】 御意見、修正案がありましたら、来週水曜日までによろしくお願いします。
それでは、本日の委員会、これで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付
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April 23, 2020 at 12:07PM
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第10期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第5回)議事録 - 文部科学省
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