クリーンエネルギーを求める世界の中間層は、35億人規模から10年後に53億人に増えると予測されている。長期にわたりクリーンエネが、生活の質などを向上させれば素晴らしい。だがクリーンエネに関する技術は大量の鉱物を必要とする。
世界の電気自動車(EV)は、現在の500万台から10年後に1億2500万台に増えるとされる。EVは一般車よりも4倍以上の鉱物を使う。世界銀行はバッテリーの技術開発で、ある鉱物の需要が2050年に10倍に増えると試算する。
クリーンエネの供給網は希少鉱物に依存する。供給網の寸断や独占的な供給元への依存が経済や安全保障を脅かす。世界各国は供給網にアクセスでき、持続可能なルールに沿うとの確証を得るため行動すべきだ。
メディアが鉱物の採掘過程などでの奴隷のような労働環境や取り返しのつかない環境破壊、広範な腐敗などの負の側面を報じている。こうした側面を許す国は責任ある企業からの投資を失い、略奪的な者との取引を強いられる。賄賂や拙速な融資は腐敗や高金利となり将来世代にツケを回し、資源国は長期的利益を得にくい。
資源国は世界有数の事業者とのビジネスを好むが、持続可能な鉱業育成に必要な手段をしばしば欠く。溝を埋めるため米国はカナダやオーストラリア、ペルー、ボツワナと「多国間エネルギー資源統治イニシアチブ(ERGI)」に取り組む。鉱物産業の最良事例を各国に認識してもらう動きだ。
ERGIは、実務的かつ迅速に実施できる手段を提供するオンラインのツールキットを立ち上げた。一般的な基準に従い、採鉱契約のパターンを示したり鉱物成分の分類を詳細に記したりする。
米国は供給元のガバナンス強化を進めなければ、供給が需要に追いつかないという真の課題がおきるとの問題意識を高めるよう促す。日本がERGIを支援すれば、どの国も鉱物に関する基準から逸脱させず二酸化炭素(CO2)排出量を減らす目標を実現できる。日本は国益や価値観を共有する米国のパートナーだ。我々は鉱物の生産方法や供給元についてもっと思いをめぐらせる必要がある。
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