「製品を触ってもらう機会を増やしたい」と永広プロジェクトマネージャー
金型用材料などを製造する竹内型材研究所(神奈川県伊勢原市、内山真司社長、0463・93・7771)は、ゲーム対戦競技「eスポーツ」用の金属マウスパッドを開発した。主人公の視点で対戦するシューティングゲーム「FPS」のゲーマーを中心に、2019年10月の発売から約半年間で100枚以上を販売。同社初のBツーC(対消費者)向け製品成功の背景には、徹底したマーケティングやこだわり抜いた製品開発があった。
同社は精密金型のコアプレートなどに使う熱処理済みの合金工具鋼を製造する。18年にマーケティング部を発足し、新たな顧客層の獲得を進めていた。まずは分かりにくい素材を知ってもらおうと、自社製品の開発に乗り出した。
プロジェクト責任者の永広知史プロジェクトマネージャーは「激しくマウスを動かすeスポーツを見て、鉄の5―6倍と高硬度で、摩擦に耐え、高い平面度・平行度を実現する当社技術が応用できると考えた」と話す。
こうして始まった金属マウスパッド「ニンジャラットマット」の開発では、顧客ニーズを徹底的に調査。ゲーマーごとにマウスの滑り方の好みは異なるため、さまざまな滑り性や止まり性がある4種類のマウスパッドを用意。複数の市販マウスのセンサーとマウスパッドの相性試験も実施した。価格は6万2000円(消費税抜き)以上と高価だが、再研削にも対応。布製で消耗品というマウスパッドの常識を覆し、一生使えるモノという新たな価値を生み出した。
認知度アップのため力を入れるのはファンづくり。18年12月から運用するツイッターの製品専用アカウントはフォロワー数が2万人を突破した。最近はeスポーツイベントの協賛なども積極化。3月に開いたイベントでマウスパッドを使ったトロフィーを制作した。
永広プロジェクトマネージャーは「製品を触ってもらう機会を増やしたい」と話す。地道なファンづくりが企業自体のファン獲得にもつながる。(取材=川崎・大串菜月)
日刊工業新聞2020年4月10日
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