Saturday, May 2, 2020

イベント自粛と材料難…風船メーカー「マルサ斉藤ゴム」は入り口と出口を塞がれた(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース

【コロナ感染恐怖 倒産の現場】#12

「消防団にも入り、商店街の役員にもなってくれた。東京マラソンにも出場するなど、若々しく、フレッシュな社長で感じも良かった」と、地元の商店街から愛されたゴム風船メーカーの「㈱マルサ斉藤ゴム」(東京・墨田区)の齋藤靖之社長。

 だが、4月6日、同社は東京地裁に破産を申請した。負債総額は債権者35人に対して約2億円だった。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、イベントなどの風船需要が縮小し、海外からは材料仕入れも困難になった。まさに、入り口と出口を同時にふさがれた格好となった。

「マルサ斉藤ゴム」は、1950(昭和25)年創業のゴム風船、フィルム風船などの製造販売会社で、齋藤社長は3代目にあたる。2009年に齋藤社長が就任した当時、少子化の影響などで国内の風船需要が縮小していた。そこで大人向けの風船も開発を進め、日本で唯一の手作り風船「マルサバルーン」を開発した。

 他にも、小さな子供から大人、高齢者まで参加できる「ふうせんバレー」の製造販売も手がけ、2018年11月期の売上高は2億4075万円をあげていた。

 齋藤社長は縮小が続く国内市場から、海外にも市場を求めた。14年にヨーロッパや東南アジアに進出し、なかでも人口増加が著しい東南アジアの市場開拓に力を注いだ。

 当初、フィリピンを視野に入れたが、現地販売のハードルは高く、進出は難航した。そこで打開策としたのが、フィリピンなど海外からのインターン生の受け入れだった。15年から受け入れを始め、来日したフィリピン人のインターン生にフィリピンのマーケット調査などを経験させた。帰国したインターン生が16年12月に同社製品の現地販売会社を起業し、17年7月から営業を始めた。フィリピンを海外進出の足がかりにして、経営は順調に広がったかに見えた。

 だが、国内では主力の子供向け玩具用ゴム風船の受注の落ち込みが深刻だった。そこに新型コロナウイルスが直撃した。中国や東南アジアからの材料仕入れが困難になり、国内ではイベント自粛が続く、という四面楚歌の状態で、一気に資金繰りが限界に達した。

 一時、メディアに「地元墨田区で訪日外国人向けのゲストハウスや、旅行代理店と協力して何かしらのインバウンド向け企画を実施したい」と夢を語っていた齋藤社長だが、新型コロナウイルスはその熱い思いも打ち砕いた。 (つづく)

(東京商工リサーチ情報部)

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