Thursday, June 25, 2020

全固体電池の大容量化を実現する電極材料、大阪府立大が開発に成功 - ITmedia

 大阪府立大学は2020年6月、全固体電池の高エネルギー密度化に有用な正極材料を開発したと発表した。低融性のリチウム塩を添加し、酸化物系正極活性物質を非結晶質化したもので、これを用いバルク型の全固体電池において酸素還元を利用した大容量充放電の実証にも成功したという。

 従来型の全固体電池の電極活物質には、リチウムイオン電池で用いられている結晶性の遷移金属酸化物が転用されているが、リチウムイオンの正極活物質の高容量化に必要な遷移金属と酸素の両方の酸化還元による電荷補償が全固体電池に適用された例はないという。また、従来の全固体電池の場合、固体電解質を大量に混合しなくてはならない点が、エネルギー密度の低下要因となっていた。

 これらの背景には、全固体電池は従来の電解液を用いる電池と比べて、電極と電解質の間の良好な接触が困難であることに加え、リチウムイオン伝導経路の構築が困難であることが関係している。また、全固体電池の作動には、電極―電解質界面の構築が非常に重要であり、全固体電池に適した新規な電極活物質の開発が必要になる。そこで研究グループでは、全固体電池の高容量化と固体界面構築に着目し、低融性リチウム塩を複合化させ非晶質化することで、全固体電池に最適な高成形性の正極活物質の開発を試みた。

 具体的には、硫酸リチウム(Li2SO4)をリチウム過剰正極(Li2RuO3)に複合化し、Li-Ru-S-Oからなる非晶質材料の中に数nmサイズのLi2RuO3結晶が埋まっているものを作製した。

 構造解析の結果、非晶質部分は電極活物質と固体電解質(イオン伝導体)と固体の接触界面構築の二つの機能を発現していることが分かった。さらにこの材料を全固体電池の正極材料として用いて、その作動特性を評価したところ、遷移金属であるルテニウム(Ru)の酸化還元反応に加えて、酸素の酸化還元反応を伴う大容量充放電が生じていることが分かり、本研究の成果はバルク型(粉末成形型)の全固体電池において世界初の酸素の酸化還元を伴う2電子反応の高容量充放電材料の実証例になったとしている。

従来のバルク型全固体電池(左)と今回開発した高容量正極材料を用いたバルク型全固体電池(右) 出典:大阪府立大学

 今回の成果は、固体電解質だけではなく、酸化物系の正極活物質にも成形性を与えるものであり、低融性の固体電解質である硫酸リチウムを加えて非晶質化することで、成形性とイオン伝導性の両方を正極活物質に付与することに成功している。また、電極活物質にイオン伝導性を与えることによって、充電後の電極においても高いイオン伝導性が発現し、正極活物質の利用率を向上することで高容量化を実現。さらに、固体電解質を混合しない厚い電極層においても電池の作動が可能であり、高エネルギー密度化にも貢献できるとしている。

 研究グループでは今後、今回の手法においてルテニウムをより安価な元素に変更し、同時に大量合成手法の開発も進め、実用化を目指す方針だ。

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