Tuesday, March 17, 2020

角膜を参考に、無色透明で高靭性の材料を開発 - @IT MONOist

名古屋大学は、透明な生体材料である角膜の構造を模倣することで、光学的には無色透明で、力学的には高靭性な複合エラストマーを開発した。今後、高度先進医療やウェアラブルディスプレイ、ソフトロボットなどの分野への応用が期待される。

 名古屋大学は2020年2月28日、透明な生体材料である角膜の構造を模倣することで、光学的には無色透明で、力学的には高靭性な複合エラストマーを開発したと発表した。同大学大学院工学研究科 准教授の竹岡敬和氏らと、理化学研究所、ユニチカなどの共同研究による成果となる。

 研究グループは、硬い材料と柔らかな材料が集合化し、光学的透明性と力学的高靭性を兼ね備えた角膜に着目。角膜を参考に、柔らかな架橋高分子中に直径約100nmの球状の硬いシリカ微粒子を高濃度で分散させ、シリカ微粒子が秩序のある状態で分散した複合エラストマーを作製した。

キャプション 角膜(a)と開発した複合エラストマー(b)の微細構造の概念図 出典:名古屋大学

 この複合エラストマーには、架橋高分子を構成する高分子とは異なる屈折率のシリカ微粒子が高濃度で分散しているが、秩序のある状態でシリカ微粒子が配列したことで、光学的に無色透明な状態となる。

キャプション 懸濁液中におけるシリカ微粒子濃度変化に伴うシリカ微粒子の集合状態の変化を示す概念図(上)と懸濁液の濁度変化(下) 出典:名古屋大学
キャプション エラストマー中のシリカ微粒子濃度変化に伴うエラストマーの濁度変化(左)と34vol%シリカ微粒子を含む複合エラストマー中のシリカ微粒子の配列を示す電子顕微鏡像(右)(クリックで拡大) 出典:名古屋大学

 また、硬いシリカ微粒子と柔らかい架橋高分子との界面における相互作用により、複合エラストマーの弾性率と伸長率が増大することが分かった。実験では、シリカ微粒子を35vol%含む複合エラストマーの破壊エネルギーは、シリカ微粒子を含まないものの約13.5倍であった。

 従来の複合エラストマーは、充填剤の添加により硬くなるが、伸張性が損なわれるという課題があった。また、黒色のタイヤの例のように、光を通すことができなかった。今回、シリカ微粒子と架橋高分子の相互作用により、光学的に透明で優れた力学特性を備えた複合エラストマーを開発できた。今後、高度先進医療やウェアラブルディスプレイ、ソフトロボットなどの分野への応用が期待される。

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