台湾の「ナショナル・マスクチーム」で中心的な役割を果たした衛生材料最大手「南六企業」(本社・高雄市)の創業者で会長の黄清山氏は1日までに、産経新聞の取材に応じ、台湾で深刻なマスク不足が回避できたことは「政府と民間企業が力を合わせて手に入れた勝利だ」と語った。
新型コロナウイルスが中国で流行し始めた1月下旬、黄氏は台湾当局の関係者から「海外からマスクを調達できないか」との相談を受けた。子会社のあるインドでマスク数百万枚を購入し台湾に送ろうとしたところ、インドでも感染が拡大し始めたため断念し、「現地政府などに寄付した」という。
「自分の問題は自分で解決するしかない」と考えた黄氏は、当局が調達したマスク生産ラインを工場に導入。全従業員に12時間交代で働いてもらい、機械は24時間稼働させ続けた。「従業員の日当を5倍にして、(1月下旬の)旧正月休みも返上してもらったが、それでも人手が足りなかった。政府に頼んで軍の兵士に来てもらい、梱包や箱入れなど簡単な作業を手伝ってもらった」。
当時、最も懸念されたのは「マスクの原材料不足」だった。供給最大手の黄氏は知り合いの当局高官に頼まれてテレビに出演し「マスクを生産する原材料は十分ある。必要なところには全て提供する」と宣言した。この発言で多くの業者と市民は安心し、薬局でマスクを買うための行列が短くなったといわれる。
黄氏は会社に備蓄している美容パック、紙おむつ、ウエットティッシュなどの原材料を、赤字覚悟で全てマスク用に振り向け、危機を乗り切った。
黄氏が最も印象に残ったのは、蔡英文総統が2月17日、工場視察に訪れたことだった。「不眠不休に近い状態で働き続けた従業員らは、総統から直接ねぎらいの言葉をかけられたことで社会に貢献していると実感し、士気はさらに高まった」という。
「台湾の需要はほぼ一段落したので、今後は外国への支援に力をいれる」という黄氏。6月から日本に300万枚を寄付する予定という。(高雄 矢板明夫)
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June 01, 2020 at 02:17PM
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